ミクスチャーロックイズムの巻 - ジェイロック回顧主義 #4


──前回から大分開いてしまいましたが、、、

いや、別に忘れていたわけでもネタ切れだったわけでもないです。ただこのシリーズ、異様に労力と時間が掛かるので。

要は「面倒だった」ということですね、わかります。

…。 今日の話題に入りましょうか。

ファンの耳を育てるのもアーティストの仕事だと思ってます

──前回は「hideやBUCK-TICKがマニアックな音楽性を取り入れることによりファンの耳を鍛えた」という話でした。

これは最近一部で言われているような「若者の洋楽離れ」の原因のひとつでもあるかも知れないんですけど、最近雑誌見てもあまり音楽的な確信に触れたインタビューとか少ない気がするんですよね。それこそ昔は「自分がロックに目覚めたアーティストは〜」「最近よく聴く○枚」みたいな企画が沢山あったんですけど。今のリスナーがそういうものを望んでいないと言われてしまえばそれまでなのかもしれないけど、寧ろそれを育てるのもアーティストの仕事だと思ってますし。山下達郎がラジオで自分の宣伝はさておき、おススメの音楽をひたすらかけるみたいなことって大事なんじゃないのかなと。今はブログやTwitterで自由に発言出来るわけだし、日記的なものならいざ知らす、政治や市場動向の発言するんだったら、もっと音楽の話しようよと思っています。

──雑誌では語られない話とか興味ありますしね。バンドやってる人なんかは機材関係の話も興味あると思いますし。

そうなんですよね、ギタリストなんだから「新しいギター・機材買いました」なんて話題ももっとあってもいいと思うんだけど。実際そういうの殆ど見かけません。需要が少ないとかじゃなくて、別にそればっかりにしろということじゃなくて、たまにそういうのあってもいいんじゃないのと思います。

実験的要素を取り入れた音楽を耳にしていたからMADのサウンドには馴染めたはず

──インダストリアルからのヘヴィロック、ミクチャーロックの流れ。そもそも“Mixture Rock(ミクチャーロック)”って和製英語ですよね?

ですね、海外だと”Heavy Rock”, “Loud Rock”。いつからその“ミクスチャー”という言葉が出来たのか、『GrindHouse』が言いだしたのか全く持って不明なんですけど。多分90年代後半かな?それこそ『Dance 2 Noise』のライナーノーツにはSonic Youthやレッチリのような新しいオルタナロックの形として“クロスオーバー・ロック”と表現しています。“クロスオーバー”はジャズやフュージョン、即興音楽などの音楽スタイルではもっと前から使われてきた言葉で、最近のシューゲイザーやエレクトロニカ要素を混ぜたような海外のインディーバンドも“クロスオーバー・ロック”と言われてます。
〈ミクチャーロック=ラップヴォーカル+ヘヴィミュージック〉みたいな印象が強くて、でもそういうと「違う」という人も居るんだけど、ヘヴィロックバンドが出て来てから浸透した言葉だから、それでいいんじゃないかと。和製英語なので海外だと基本通じない言葉なんですが、J-Rock好きな外国人はこの言葉が日本で生まれたことを加味して、the GazettEやlynch.のようなV系のヘヴィロックバンドを”Mixture Rock”と指す場合もあるようです。

──では、ここではあえてミクスチャーロックを使います。90年代のミクスチャーというとやっぱりTHE MAD CAPSULE MARKETSの存在はデカイですよね。

MADは前身にあたるBERRIE結成当初は初期BOØWYみたいなバンドで。それからスターリン的なパンク要素が強くなり、最終的にはデジロックになって行く。認知度が飛躍的にアップした『MIX-ISM』『PARK』(共に1994年)の頃はサウンド的にも音楽的にも一番幅広くやっていた頃ですから。レコード会社もこの手のバンドにしては尋常じゃないくらい力を入れていたし、hideやB-T今井の後押しもあったり。

──LSB(LUNA SEA・SOFT BALLET・BUCK-TICK)というイベントのオープニングアクトも務めました。

『MIX-ISM』『PARK』の時にそれぞれ渋谷公会堂でライブやってるんですよね。間に日比谷野音も。賛否両論ありましたけど、これで飛躍的にファン層は拡がりました。やっぱりMADのライブって恐くて行きづらい人多かっただろうし。当時古参のパンクス連中と新参の黒服女子たちがロビーで揉めてる光景もよくありましたけど(苦笑)
hideにしろ、BUCK-TICKにしろ、色々実験的要素を取り入れた音楽を耳にしていたファンにはMADのサウンドは比較的すんなり馴染めたはずです。逆にその弊害でもっと耳の早かった洋楽のヘヴィロックリスナーからは「MADは黒服系バンド」だと思われていた節がある。現に『GrindHouse』がMADを取り上げだし始めるのってずっと後になってからなんですよね。

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横のつながり、ライブハウスのフィールドが完全に出来上がってきた

──前回「93年発売のアルバムに異色作が多い」という話が出ましたけど94年も負けてないですね。先述のMADの2作とBUCK-TICK『Six/Nine』、SCHAFT『SWITCHBLADE』、そして海外ではKORNがデビューしてます。

KORNの1stはノンプロモーションで、口コミで時間を掛けてジワジワ売れたアルバムだからその頃はまだキてはいないです。海外だとPantera『Far Beyond Driven -脳殺-』がヒットして。HelmetやWhite Zombieあたりのバンドが“Modern Heviness”と呼ばれるようになってきた頃ですね。SUPER JUNKY MONKEYがメジャーデビューしたのも94年か。翌年にMADの創始者・室姫深がDie in Cires活動休止中にBLOODY IMITATION SOCIETYを始めます。だから、黒服の連中の多くがヘヴィロック化して行ってる頃です。だから自然とそちら方面に流れたファンも多かった。
この界隈のバンドってメジャー/インディーズ問わず対バン形式じゃないですか。だからお目当てのバンドを観に行って新たなバンドに出会うことが自然な流れで、バンド同士の横のつながりであるとか渋谷サイクロンと横浜FADに代表されるようなジャンルとそのハコの特色が解りやすい、そういう地域性のライブハウスシーンが出来上がってきた。

──KCHC (KASHIWA CITY HARD CORE)とか

柏のディスクユニオン頑張ってたなぁ。そうそう町田にトロピカルゴリラというバンドが居ましてね、そこのメンバーさんが町田のディスクユニオンでバイヤーをやっていて。だから町田ユニオンは今よりずっと狭い店舗だったけどそっち系統はかなり充実してました。

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なんとなくミクスチャーが端に追いやられてしまった感もある

──KORNと言えば、Rage Against The Machineはどうです?1992年デビューなんですが。

レイジはね、KORNよりジワジワしてたと思いますよ。確か邦楽誌にレイジの名前が載ったのってBLOODYの児島実(室姫)のインタビューが初だったんじゃないのかなぁ。レイジが97年のフジロックで初来日したときに赤坂BLITZで単独公演があったんですけど、オープニングアクトがMADだった。さぞかし危険なライブになるんだろうななんて思ってたんですけど、明らかにMADとレイジのファン層が違ってた。当時のレイジファンって、インテリ系の人が多くてジっとトム・モレロのプレイを凝視するって感じで。今じゃ考えられないんですけど。

──確かにレイジって音楽よりもトムのギタープレイで脚光を浴びた節がありますよね。どうやってあの音出してるんだ?っていうところは大きかったように思います。

あと、スタンディング慣れしていないっていうのもあったのかなぁ。今でこそ大バコのスタンディングが主流だけど、当時はせいぜいON AIR EASTとクラブチッタ、ともに改装・移転前だから今より小さかったし、新宿パワーステーション、当時新宿にあったリキッドルームくらいで。96年オープン当時の最大規模だった赤坂BLITZじゃ観に来ている人も勝手が解らなかったと思いますよ。その後はスタンディング主流になって行くんですけどね、東京ベイNKホールも国内外問わず、アーティストによってはスタンディングでしたし。

──スタンディングだとモッシュやダイブが恐い、っていうのもあったと思うんですけど。今は一部覗いては禁止です。

当時も厳しくはなかったけど禁止してたと思うなぁ。勿論今ほど規制してなかったし、やってるヤツはいたけど。あ、でもダイバーが急増したのAIR JAMのせいだ!きっと(笑)いや、MADのライブとかダイブするヤツはそこまで多くなかったんですよ、人の上歩いてるヤツはたくさんいたけど。で、『DIGIDOGHEADLOCK』(1997年)のリリース前にFC限定ライブがON AIR WESTであったんだけど、この時からダイブがオフィシャルOKになったの。それからというものの、飛ぶヤツだらけになって。今の言葉でいうピンチケみたいな騒ぐことを目当てでライブ来るヤツらが多くなった。AIR JAMの初開催が97年なんですよね、ハイスタ周りのメロコア勢って「みんなで拳あげようぜ!」みたいな連帯感があるじゃないですか。パンクスは自分勝手だからそういうのキライなんですよ。何かそれからMADも\Oi!! Oi!! Oi!!/って掛け声が入るようになりました。前までは\でてこいや!《゚Д゚》ゴラァァァァァァァァァァァァア!!/っていう野次ばかりだったのに。ステージに向かってツバ吐く人も居なくなった。

──ヘヴィロックシーンでもミクスチャー界隈とメロコア界隈って似ているようで似てない部分ありますからね。

ミクスチャーやってるヤツらって捻くれてるんですよね、ハードコアも。基本反抗してるし。メロコアって「青春パンク」なんて言葉もありましたけど、捻くれてない、寧ろ前向きなの。これが本当の意味で〈ポジティブ・パンク〉なんじゃないかと。結局ハイスタが尋常じゃないくらいセールス的にも成功したり、フェスブームが来て、なんとなくミクスチャーが端に追いやられてしまった感もあるんだけど。MADも硬派なイメージ脱却して温和な感じになったし、メロコア要素のある明るい楽曲もやりだしたし。

──良くも悪くもハイスタの成功、AIR JAMによってこのヘヴィロック・パンクシーンが幅広く世間的に認知されるようになった、と。

このシーンはそれこそMADの登場で注目を浴びたんだけど、まだまだマニアックなシーンでしたし。雑誌で取り上げられることも少なかったし情報源は主にライブハウスなんですよね。だからMADの界隈ではWRENCHがいたり、ハードコア寄りではCOCOBATが居たりもしたんだけど、そういうのは一部のメジャーバンドで。ライブハウスには表立ってないけどいいバンドが沢山居た。あとはテレビ神奈川。TVKは昔からMTVっぽい番組が多かったんだけど、『ビデオ星人』というヘヴィロックに特化した番組がありまして。有島博志氏も出てたり、洋邦問わず色んなバンドを紹介してたなぁ。このシーンの特徴としてリスナーが洋楽・邦楽をあんまり意識してないっていうのもありますね。英語だ、日本語だとかは二の次で。強いていうなら、気軽にライブ観られないのが海外のバンドだ、っていうくらい。

Rage Against the Machine
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なんだかんだ、チャートを賑わせたDragon Ashの影響力って大きい

──ミクスチャーロックの成功と言えば、Dragon Ashも外せないところではあります。

ですね、良くも悪くも〈ミクスチャーロック=Dragon Ash〉のところはあると思います。最初はグランジ寄りだったのが、ヒップホップ要素を取り入れ、ブレイクのきっかけになった『陽はまたのぼりくりかえす』が1998年。あとはKORNの弟分として登場したLimp Bizkitがダーク路線から一皮剥けて世界的にヒットした『Significant Other』が1999年。この頃じゃないですかね。ミクスチャーという言葉が世間の中で確立したのは。元々ミクスチャーやヘヴィミュージックはお茶の間に浸透する音楽ではなかったわけですし。寧ろそこを毛嫌いする連中が演ったり聴いてたりするわけで。だからなんだかんだ、チャートを賑わせたDragon Ashの影響力って大きいんじゃないかと。

──ヒップホップとロックの親和性みたいなところが完全に市民権を得たわけですよね。

ヒップホップとロック、ラップコアと言うところでは、レイジやKORNが居たし、ルーツミュージック寄りにはG.Loveやジョンスペも居たし。Dragon Ashはそこをもっと日本人向きにしたんじゃないのかなぁ。まぁ、かなり好き嫌いは別れるところだとは思うんですが。ORANGE RANGEみたいなバンドもだし、RIZEしかり、インディーズには山嵐だったりとか、湘南音祭寄りなバンドとか。

Viva La Revolution
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『Californication』は守りに入っていくような印象を受けるからあまり好きじゃない

──ミクスチャーシーンってラップコアとまでは行かなくとも、ラップ+ロックでレッチリの影響下みたいなところもあります。

レッチリはファンクだからねぇ。でもこの界隈のジャンルのベースは完全にフリーの影響ですよ、KORNのフィールディーもだけど。Primusのレス・クレイプールだと変態すぎるけどフリーなら。
丁度昨日ラジオでクリス・ペプラーがレッチリの話をしていて。「自分は『母乳』が好き、『Californication』は年老いていく自分たちに対して守りに入っていくような印象を受けるからあまり好きじゃない」みたいなことを言っていて「あー、おれもおれも」と妙に納得したわ。確かにジョン復帰で盛り上がったアルバムなんだけど、正直自分が求めていたレッチリじゃなかったんだよなぁ。それならナヴァロ時代の『One Hot Minute』のほうが自分の求めるレッチリ像に近い。ミクスチャーという言葉が出て来た頃は「レッチリが元祖ミクスチャーバンドだ」という声も多かったんだけど、『Californication』以降はそう言った声をあまり聞かなくなりました。

──確かに『Californication』やもっと後の『DEATH NOTE』でレッチリを知った世代とその上の世代ではレッチリの印象違いますよね。

落ち着いちゃったといいましょうか、最近はまたはっちゃけ始めてるみたいだけど、Incubusの方向転換は多いにアリだったけど、レッチリは流石に戸惑いました。クリスも驚いてたけど、『Californication』って99年なんですよね、もっと最近だと思ってた。個人的には『One Hot Minute』あたりで人気が安定するバンドだと思ってた。そしたら更に売れたし、まさか東京ドームでレッチリを観るとは!何か正直微妙だったんですけどね、U2は10万人でも40万人ライブでも想像出来るバンドだけど、レッチリは5万人のドームで「?!」みたいな。

Californication
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──2000年代からそれこそDIR EN GREYがヘヴィロック化したのを皮切りにV系バンドによる独自のヘヴィロックシーンが出来上がったと思うんですけど。

所謂新しいタイプのミクスチャーというか、いや、ミクスチャーよりヘヴィロックというほうがしっくりくるな。日本ではミクスチャーという言葉が浸透しすぎたために、こういったV系バンドが海外から”Heavy Metal”と言われるのに最初はなんだか抵抗があったんですよね。海外ではOzzy OsbourneもKORNもMinistryも”Heavy Metal”だから。結局ゴス〜ニューウェーブの流れから日本の黒服文化が産まれて、さらにインダストリアルロックに発展し細分化するんだけど、結局、日本独自の黒服寄りのところに戻ってくるんだなぁ、と面白いところではありますね。MADのTAKESHIもTシャツ+ハーフパンツ姿だったのが、AA=では目の周り黒くして棒タイしてる。個人的にはこっちのほうがしっくりくるなぁと。

VULGAR
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#1
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──海外でウケたV系界隈のシーンについてはもう少し詳しく聴きたいところですが、それはまたの機会で。次回はちょっと視点を変えて黒服系統を被っていないシーンについて触れて行きたいと思っています。

先は長いな、、、


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  • kedge

    正直この記事大好きなんで早く続き書いてほしいです。
    こういうことを語ってくれることが回りにもインターネットにもなかったんですよ~
    本当にありがたいです。
    もしかしてフェイスブックにもっと詳しいことかいてますか?やろうかなフェイスブック。

    • fuyu_showgun

      有難うございます。
      そう言っていただけて光栄です。
      なにぶん、このシリーズ書くのに労力というか勢いが必要なので中々先に進まず申し訳ありません。
      ネタは沢山あるし、今まとめたりもしておりますので近日中には、、、
      Facebookは長文書いてないですね、ここの更新通知と動画ネタがメインになっております。