ジャンクギター再生計画【其の弐・塗装篇】

前回整形がほぼ終わったボディ、いよいよ塗装。古材・廃材感を出します。
レリックは塗装後にキズを付けるけど、今回はキズを付けてから塗装する。アンティーク・インテリア、リサイクル材の家具だったり、キズを活かした美術品、そんなイメージです。

素地調整する際に粗めのヤスリの上で作業したり、コンクリの上で引きずってみたり。
そんなキズを付けたりもしたんだけど、バスウッド特有の白木具合が何か気にくわなくて。真新しい感じに仕上げるなら白木特有のおもちゃ感、積木っぽくてそれも良いのだろうけど。

Body

ということで、古材の雰囲気を出すために行ったのはコーヒーによる着色。
インスタントコーヒーを濃いめに淹れて塗る。要は着色ステインの役割。コーヒーってどうなの?と思うかもだけど、アンティーク・シャビーシック加工の家具/小物のDIYでは定番の手法。
市販されている着色ステインって絵の具的といいましょうか、割りと均一な色が出るように調整されてますが、コーヒーはそんなことあるわけがない。木目が粗いところは濃いめの褐色、詰まっている所は若干黄色っぽくなって、予測不可能な感じにまだらに染まる。
何回か重ねて塗ったり削ったりで調整。あまり塗りすぎるとベトベトになるのでやりすぎ注意。塗料ではないので、仕上げは必須ですけどね、この上からステインや色のついたワックスを塗るとくたびれた良い感じになります。

あとは要所要所、火であぶりました。
やりすぎるくらい表面が真っ黒にひび割れるまであぶって、真鍮ブラシで水洗い。こうすることによって古材感と同時に木目の少ないバスウッドでも木目が強調されます。

大体、ポリを剥がしての再塗装と言えば、比較的容易なオイルフィニッシュが定番だと思うんだけど、柔らかくて木目の少ないバスウッドにオイルフィニッシュしてもなんの面白みもなく、強度面においてもすぐにキズだらけになるだけなので除外。素材の味とハンドメイド質感を出すので吹きつけのラッカーではなく、筆塗りのオイルニス系を物色。セラックニスも考えたんだけど、昔から一度やってみたかったカシュー仕上げにしました。

カシューと言えば漆の代用品としての定番塗料。釣りをやる人にはお馴染。特徴と言えば見た目は漆仕上げと殆ど変わらない“ぽってり”とした質感。ポリやラッカー、ニスでは絶対に出せない味。
ギターの世界では80年頃のグレコやトーカイ、フェルナンデスあたりの国産メーカーの高級機種はカシューだったんですよね、エレキでは近年殆ど見かけなくなりましたが、個人のクラシックギター製作家では未だに根強い人気の塗料です。

カシュー塗装の奥深さ

筆塗り、拭き塗りを中心とした漆と同じ塗装法が使え、更にその技法は細かく色々あるのですが、定番はオーディオマニアがスピーカーエンクロージャーを作る際にもよく使われる〈蝋色(呂色)仕上げ〉。塗って乾かして研いで(磨いて)を繰り返しつつ平面鏡面に仕上げる。高級仏壇やピアノなどはカシューによる蝋色仕上げがあります。
個人的には蝋色仕上げとはまた違う、〈花塗り(磨かずに塗りっぱなし)〉が一番美しいとは思っているのですが。ピシっとした平面スクウェアな形状の塗り潰しなら蝋色仕上げのほうがいいけど、曲線と平面が共存するギターのデザインにクリアだとやっぱり塗りっぱなしがいいなと。キズも活かせるし。

カシューは一般塗料に比べると肉持ちがよく、不揮発分が高いので、塗り方が命。のびは良いけど、筆の種類は勿論、力加減と筆の角度を上手く調整しながらコツを掴まないと刷毛斑が出来やすい。逆にこの斑を活かして水面のような塗膜を作っていく。

Junk Guitar Rebuild #3
言うなれば、水飴、リンゴ飴のようなイメージです。

そしてもう一つの問題、どうしても気泡が入る。カシューの稀釈濃度や溶液の種類(カシューシンナーの他、テレピン油、灯油など)、刷毛・筆選びも色々試したのですが、どうしても無理、、、タンポ塗りにすると気泡は入りにくいんだけど、逆に水面のような塗膜が出来ない。結局諦めて表面は研ぐことに。平面を出す研ぎ方ではなく、ぽってり感を残しつつ、あくまで気泡を取り除くためだけの研ぎ方。

目止めはしてません。カシューの色は下塗りが淡透(たんすき、少々黄味を帯びた褐色)、上塗りをクリヤー(わずか赤味を帯びた淡黄色)にしました。異なる2色の透明色を重ね、研ぐことにより角度によって絶妙な色合いと木目による表情が出る、き、木地呂(きじろ)塗りというやつか(ふるえ声
いや、実際はそこまでプロフェッショナルなわけないので自己満足の世界です。

しかし、このカシュー、小物系では過去に使用したことはあるものの、ギターのような大きさを塗るのは初めてで。改めて非常に手間暇の掛かる塗装だなと。
一度塗ると、乾燥には最低1日(色と場合によっては3日〜1週間、完全硬化は半年)、それを塗っては研ぎ、塗っては研ぎ、をひたすら繰り返し10回くらい?。研ぎすぎて木地が出ちゃったり、、、みたいなこともあったから実際はもっとかも。地道な作業ですよね、せっかちな人には絶対に向いていない。そんなこんなで予想以上の時間が掛かりました。

Neck

フレット打ち換えたほうが楽とは思ってみたものの、打ち変えるほど減ってるわけでもなかったので取り合えずは現状維持で。塗装だけ剥がしました。
そしてこれもやってみたかった柿渋+亜麻仁油仕上げ。平安時代からある日本建築の定番塗装仕上げです。番傘の傘の部分も和紙にこの組み合わせなので、如何に防水、強度が強いかがお解り頂けるかと。でも事実上オイルフィニッシュなので質感はバッチリ。

柿渋はスギやヒノキだと良い感じに赤みがかった黒褐色になるんですが、メイプルは目が詰まっているのか染み込みが悪く、若干赤みが強く出ます。でも柿渋塗装は半年〜1年くらい経たないと本来の色にはならないので、まだ解りません。
でも良い感じにくたびれた感じは出たかと思います。

Head

元のペグはクルーソンタイプ、破損しているものがあったので要交換。私はクルーソン派、特にフェンダー系のギターはペグは軽ければ軽いほうが良いと思ってます(Gotohのステルスキーが凄い気になる)。元々のブッシュ穴が10mmだし、SparzelやHipshot製のも考えたけど、無難にGotoh SD91。

話飛ぶけど、Sparzelのロック式じゃないヤツ、軽そうで良さげなんですよね、オープンバックタイプとか何種類かある。日本じゃ売ってないんだけど。ちなみに海外ではシルバーや黒だけじゃなくて赤や青、緑なんかもある。あれエグくて好き。(詳しくはコチラ→ sparzel.com
東京町田にあるスガナミ楽器という楽器店にその昔、Bugtone(バグトーン)というオリジナルブランド?があって、そこのギターが個性的で赤や青のSparzelが付いてたんですよね。
Bugtone、ヴィンテージスタイルとモダンなデザインをセンスよく織り交ぜていて、作りも良く、いいギターブランドだったのにいつの間にか無くなっちゃったなぁ。エイドリアン・ブリュースタイルのムスタングモデル(3シングル、ケーラートレモロ)とかあって、いつか買ってやる!と思ってた。確証はないけど、もしかするとデバイザーで作ってたのかもしれない。そんな雰囲気のブランドでした。

ゴトーのブッシュ穴は8mmなので、コンバージョンブッシュで回避しようと思っていたら、元のペグ、グレコのオリジナル規格で。クルーソンタイプは1つのネジで2つのペグを股がって固定してるじゃないですか、だからオリジナル規格だとゴトーサイズに合わない。結局元穴埋めて開け直すことに。

ついでにヘッドストックの変更。ストラトヘッドも芸がないのでオリジナル形状を考案。幾つか好きなタイプのヘッドストックをあてがって見るも、どうしても面積が足りない。ボディのように継ぎ足せば良いんだろうけど、ヘッドの厚み15mmを継ぎ足すって、弦張力からの負担も考えるとあまり好ましくないような気がするので。昔のヘッドのデカいビザールギターにありがちな破損、ジョンスペのギターみたいな折れ方するのもイヤだし。

ということで何とかリデザインしました。Teiscoのピストルヘッドを元に、継ぎ足さないように収めました。ついでにTeiscoのボディー色ともネック材とも関係のない突き板を貼ることによってチープ感を出してみました。多分Teiscoはデコラあたりなんだろうけど、それっぽいオークを貼ってみた。カシューフィニッシュ。

しかし、改めてヘッドストックデザインを考えるとフェンダーの形状って良く考えられてますね、ムダがない。ナットからペグに掛けて弦が真っすぐになるじゃないですか、そこはテンションやチューニングには影響ないだろうけど、デザイン的には美しいですよね。でも自分はTesicoやDanelectroあたりの片側6連ペグ位置による強引な取り回しが好きなので、それを試みましたが、元がフェンダー形状だったから無理がありました。

ネックポケットはキツイほうが良い?

そんな都市伝説があります。確かにネックのジョイント部の隙間はないほうが美しいけど、それが良いことなのかは別問題。ネジ留めしなくともネックがボディから外れないなんていうのは極々一部の国産メーカーだけなんですよね。フェンダーカスタムショップを始め、海外のハイエンドメーカーは皆ゆるゆる。これを「アメリカ人のアバウトさ」と解釈してしまうのはお門違いで。だったら他の部分もアバウト設計だらけの欠陥になる。ネックがギターの鳴り、サウンドの本質に多大な影響を与えることは承知の上でネックポケットを緩くしてる。それは「ここの隙間に関しては音に殆ど影響しないので、そこまでシビアにならなくとも良い」という考えだと思います。

工芸や工業の世界で異なる部品をネジ等で接合するときは“遊び”が重要になる。ぴったりすぎるのは良くないってことです。接着や溶接となると逆にぴったりじゃないといけないわけですが。
ギターは弦張った状態の張力はダダリオのパッケージにも書いてありますが、0.09-0.46のゲージで約74kg掛かってる。それだけネックジョイントにも負荷が掛かってるということですし。
だからネックジョイントがキツイギターって、ある程度時間が立つとボディ側が必ずと言っていいほどヒビ入ってます。リペアマンに見せると「塗装割れなんでボディは大丈夫です」なんていう答えが返ってくるんだけど、こればかりは剥がしてみなきゃ解りません。自分の経験上、剥がしてみると9割方ボディもヒビ入ってます。ただ、表面上のヒビで、それが原因で破損、大きく割れるような致命的なモノはないのですが。

デタッチャブル構造設計が主流の管楽器の世界。木管楽器も金管楽器もその意はチューニングの役割や構造上の理由だったり色々な意味があるのですが。クラリネットあたりの各管部のジョイントを思いっきりキツく調整してしまうと、非常に詰まったような吹いていてストレスが溜まるような音になる。そこの微妙な遊び調整がリペアマンの腕の見せ所だったりも。

ギターのネックジョイントによる鳴りの影響部分は個人差もプラシーボ効果もあると思うので、隙間があるほうが鳴るなんてことを一概に断言できないのですが。ジョイントプレートの材質や厚みによる影響は少なからずあるのは間違いないので。ジョイントネジの締め具合もそうだし。ネジの締めすぎは良くないというのは良く言われることですが、ネジがなくともネックとボディが外れないような設計だったらネジの締めすぎはあまり関係ないんじゃないかとも。ただ、隙間やシムうんちゃらのことでシビアになることはない、というのが私の中では結論づいてますが。

さてさて、話は相変わらず逸れまくっておりますが、こんな感じ。

Junk Guitar Rebuild #4

バスウッドとクルミ、ウォルナットの色のコントラストが薄れてしまった感は否めませんが、、、まぁ、良い感じに古材感は出たので取り合えず自分の中では良しとすることにします。

次はハードウェアですね。

つづき

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