SのためにSをねらえ! そしてすべてが信濃川

ちょっと前になりますが、Silent Siren『Sのために Sをねらえ! そしてすべてがSになる』ツアー初日の六本木EX THEATERに行ってきました。

この会場は完全なシューボックス型のホールで音響設備も良いし、外音は好きなハコ。だけど、フロアがフラットで後方だとほとんどステージが見えない。柵も少ないので客の“たまり”が出来ずらく、どこにいても不安定……という、まったく優しくない会場でもあり。整理番号1000番以降だし、余裕かまして開演ギリギリに入場したので、かなり後方。ほんっっっと、何も見えねぇ(爆)。あまりに見えなさすぎて心が折れそうになった。多目的を加味して、わざとこういう設計にしたのかは知らないけど、1500越えのキャパシティーでフラットな会場は正直イジメにしか思えない。豊洲PITしかり。渋谷AXを失った代償は大きい。

そんな感じなだったので、ステージの様子あれこれはほとんど解らず終いでした。見えない分、耳を研ぎ澄まして音と振動を感じて。黒坂るんさん(Key.)のハモリの細かさとか、山内あいにゃんさん(Ba.)のスライドのエグさとか、吉田のすぅさん(Vo. & Gt.)のブレス位置おかしいとか、梅村のひなさん(Dr.)の足クセとか、普段聴こえないところまで聴けました。(はっ、なんだこの変態感はっ…)

小細工ナシでシンプルに進行していく。年末の『覚悟と挑戦』を観たときに、あまりに成熟したバンドの姿に度肝を抜かれたのだけど、それを思う存分に堪能できる内容でございました。SEが例の曲だったので、私の「チェリボム」に関する推測はあながち間違っていなかったとほくそ笑んだ。

結構意外なセトリだった。サイサイは1曲1曲の楽曲強度がものすごく強いので、曲順だけでもいろいろパターンが組めるんだなと思った。満足度も高い内容だし、ツアーが進むにつれ、いろいろ進化を遂げそう。次、観られるのは7月の横浜アリーナかよ!

しかし、梅村さんのドラム、本当に好きだなぁ。フィルのタメかた、3連符もたつかせておいて、次の瞬間に取り返していく、これがたまらんよね。個人的に「八月の夜」が好きすぎてつらい問題があるのですが。コロコロ転がって行く言葉遊びも絶妙ながら、ライブにおけるドラムがたまらなすぎて。最高だよね。あと、「Dance MusiQ」のイントロのドラムもみんな好きでしょ?

『覚悟と挑戦』Blu-Ray/DVDがリリースになりましたが




もう武道館の映像が観られなくなるくらいんじゃないかと思うくらい、バンドの成熟度が凄まじい。音太ぇ。1年でここまで変わるのか……なんてことをあらためて感じました。それにしても、演奏、演出、照明…、すべてにおいて完璧なライブだなぁ。そして、映像化にあたってのカメラワーク&編集がものすごくいい。すばらしい映像作品です。見どころは「Are You Ready?」で山内さんが弾きながら膝つくところと、それを受けてのけぞったときの吉田さんのお腹の薄さ(そこかよ)。とにかく、この衣装がたまらなく好きだ。

良曲そろい踏みの『S』

S(初回生産限定盤)(DVD付)
Silent Siren
ドリーミュージック・
Release: 2015/03/02

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そういえば、アルバム『S』についてまだ触れてませんでした。良い曲ばかりのアルバムです。「1曲1曲の楽曲強度が強い」ということを先ほど述べましたが、それを改めて感じることのできる曲がそろい踏み。前作『サイレントサイレン』しかり、何も知識ない人に聴かせたら、どれがシングル曲なのか解らないと思う。通常、アルバムだとメリハリをつけるための“つなぎ曲”が必要になる。A曲を引き立たせるためのB曲であるとか。そういう曲がサイサイにはないというか、たぶん必要ないんだろうな。そういう意味ではベスト盤に近いんだけど、なぜかくどさを感じないのがホントに不思議。ベスト盤って、1回聴くとお腹いっぱいで、もう1周しようとは思わないじゃん。でも『S』ってサクサク聴けるしエンドレスでリピート出来る不思議なアルバム。

かなり曲順こだわってるというか。これはインタビューでもメンバー言ってますけど、かなり試行錯誤したんだなということが解るし、ちゃんと楽曲のキィやギターのコード感を考えてるんだなと嬉しくなりました。曲間も絶妙すぎる。「チェリボム」から「八月の夜」の絶妙な間。普通に聴き流してると、ハっとさせられるし、慣れてからじっくり聴き直すと「あれ?こんなに間があったけ?」と思った瞬間に不意をついて傾れ込む間の取り方。「Love install」からブッた斬るようにはじまる「hikari」だったり。個人的には「レイラ」〜「alarm」〜「nukmor」のあれよあれよと流れていく様が秀逸だと思います。「nukmor」のアタック出さない入りが良い。最近のアーティストは「この順番はないだろう」なんて思うアルバムもたくさんあるし、リスナーもiPodでシャッフルで聴いちゃう場合が多いから。これほどまでに曲順&曲間にこだわるバンドがちゃんといることが嬉しい。アルバムを生かすも殺すもコンマ秒の曲間なのです。

ただ、気になったのは、完璧な流れでもある「チェリボム」から「八月の夜」で聴覚上、音圧が堕ちてしまっていること。前者が10なら、後者は9.7くらいに聴こえる。でも、解るんだけどね。録るスタジオも時期も違えば、録り音も音色も変わっちゃうし。「八月の夜」が2015年夏リリースだから、少なくともレコーディング時期が半年以上違う。年末のライブにびっくりするくらい出音も異なるくらいになってるのだから、なおさらの事案。だから、これはバンドとしての勲章なのかなとニヤリ。

音圧揃えようと思ったらマスタリングでもう少し揃えられたと思うんだけど、たぶん「八月の夜」の音圧をこれ以上あげると、どこかでピークが歪むんだと思う。世間的には、それを無視して揃えて、音が割れてる箇所が発生してるアルバムも少なくはない。それを避けたんだろうなと勝手に思ってます。どちらが正しいわけでもないから。別に割れてしまっても構わないというアーティストも居るし、よく聴かなければ解らないことだけど。自分はディレクターとして、それを極力避けてきたタイプです。という意味で気になりながらもすごく個人的にグッときた。

サイサイの音源は基本、音が良いんです。ただ、この“音の良さ”って、音質がどうとか、洋楽的テクスチャーという方向ではなく、ちゃんと各々の楽器が鳴ってるという意味でのバランスの良さ。鍵盤や同期が入ってるバンドにしては音数少ないほうだし、ギターをたくさん重ねて音の壁を作るようなタイプでもないし、キック強めに低音稼いでるわけでもない。過剰な音圧や音量を稼がずにそれぞれ楽器の分離がちゃんとしてる。吉田さんの声質が結構微妙な周波数と倍音含んでるので、ミックスダウンの段階でその辺りは余計にシビアになっているのかとも。

総じて、すごくいいアルバムなんだけど、唯一、残念なのはラストがカバーだということ。

「secret base 〜君がくれたもの〜」はいい曲だし、アレンジ含めてサイサイにあってるとは思うんだけど、やっぱり最後はオリジナル曲で締めて欲しかったなと。

Silent Siren 2015年末スペシャルライブ「覚悟と挑戦」 [Blu-ray]
Silent Siren
ドリーミュージック・
Release: 2016/04/13

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