長渕剛『Don’t Think Twice』にみる「変わらないもの」と「変わっていくもの」

突如として配信リリースされた長渕剛のニューシングル『Don’t Think Twice ~桜並木の面影にゆれて~』

富士山麓オールナイトライヴ以降の楽曲に見られる飽くなき新たな音楽探求というべき、ありそうでなかったテイストの曲。長年聴いてきたファンにはわかる「マリア」「パークハウス」「激愛」「海」……を感じさせる、オリエンタルな香りがするメロディはここ十数年見られなかった作風でもある。そして、30代の頃の、どこか艶っぽい歌声に戻っているような気もする。ミュージックビデオの演出だとは思うが、タバコを咥える姿もどこか懐かしくて思わずニヤリ。

物心ついた頃から氏の歌を聴いてきたような自分としては、途中からもう好き嫌いという次元ではないのだけれど、昔好きだったけど聴かなくなってしまったアーティストもいる中で、何十年も飽きずに聴いてこられたのは「変わらないもの」と「変わっていくもの」の緩急が凄いからだと思う。

長渕剛は無骨な歌声やギター弾き語りの印象が強いため、なかなか伝わりづらいところがあるのだけど、古くからカントリー、フォーク、ロック、レゲエ、ゴスペル、AOR……、ありとあらゆる音楽ジャンルに挑戦し続けているアーティストである。もちろん、時流や流行に沿ったサウンドに傾向した時期もあった。しかしながら、あの野太い歌声に込めらたパッションはいつだって変わっていない。

「バンダナ巻いてた頃がよかった」とか「“とんぼ”の頃は好きだった」とか、よく耳にする。しかし、実際あの頃は無精髭を生やし、どこか強面の風貌に「“親子ゲーム”の頃の気さくなあんちゃんの頃がよかった」だなんて言われ、短く刈った髪型で「SUPER STAR」を高らかに歌っていた頃は、「長髪の透き通った歌声の頃がよかった」と。しかし、デビュー当時は「小生意気な新人」と言われた存在だった。いつの時代も、賛否の多かったアーティストであった。しかしそれが、アーティストとしての原動力、歌の力となっていることは、いうまでもないだろう。

キャリアが長くなればなるほど、過去のヒット曲をファンは求めたがるし、アーティスト自身がそこにすがりたくなるのも必然なことなのかもしれない。だけどそこに一切甘んじない氏の姿勢は、表現者として理想の形であるように思うのだ。

Tsuyoshi Nagabuchi All Time Best 2014 傷つき打ちのめされても、長渕剛。
長渕剛
EMI Records
Release: 2014/07/02

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