闇、病み、焦燥感……おっさんホイホイ、バンギャ殺し!? “V系好き”に薦めてみたいアイドル特集

「アイドルを超えた」「アイドルの域ではない」といった表現を好ましく思わないのは、アイドルに造詣のある人たちの間だけのことであって。世間から見ればなんだかんだ偏見もあったりするアイドルシーンですから、興味のない、聴かず嫌い、な層に向けては大変有効的な表現であったりもするのです。逆に言えば、演者側もそうした偏見や既成概念があるからこそ、逆手に取って「ブチ壊してやろう」という目論見もあったり。普通にやっていると見向きもされなかったことでも、アイドルがやれば評価されたりする。それは「アーティスト>アイドル」というような、ハードルが下がるから起こるわけでもなく、ただ単純に既成概念があるからこそ生まれる「意外性が面白い」というだけです。音楽含め、芸術表現は「面白い」がものすごく大事じゃないですか。まず、それがあってからこそ、いろいろな解釈が生まれていく。アイドルはジャンルではなく、文化そのものだから、その表現方法は自由なのです。

それと似ているのが「ヴィジュアル系ロックバンド」のシーン。ここ近年の動きでいえば、デスコア/メタルコアにいたNOCTURNAL BLOODLUSTがヴィジュアル系シーンに殴り込みを掛け、今や“ヴィジュアル系メタル”は大層な盛り上がりを見せております。まさに「ヴィジュアル系」という概念があるからこそ成り立っていることです。

アイドルとヴィジュアル系。元々、ファンの習性やシーンの特色による酷似性は度々述べてきましたが、今回のテーマは「ヴィジュアル系ファンに勧めてみたいアイドル」。なんともニッチなテーマだ。

コアな音楽ファンがアイドルにハマっていく光景は、ここ数年で誰もがよく見ている光景ではないかと。ただ、「真の音楽好きはアイドルを嗜むべき」みたいな妙な風潮もあったり、そもそも文化的に踏み込めないところや、今更感もあったり。アイドルシーンは多様化、細分化し活性しているのは間違いないのですが、そのぶん、コアになっていき、一見さんが踏み込みにくい状況があるのも事実。それに、アイドルファンなら誰でも当たり前のように知っていることでも、それ以外の音楽ファンは知らないことも多くあります。例えば、「渋谷や下北沢のライブハウスでアイドルのライブが毎日行われている」「新宿LOFTや目黒鹿鳴館がアイドルにとっても聖地ライブハウス化している」「サイリウムを振らないアイドルのライブ」……こういうことって、意外とみんな知らないんですよ。

いわゆる“ロックをやってるアイドル”って、BABYMETALによって広まったところがあるものの、未だ「大人たちにやらされてる」ことを毛嫌いする人もいます。しかしながら、これだけいろいろなアイドルがいるのですから、当の女の子たちも「人と違ったこと」をやろうとするのは自然の流れで。それが大人たちの思惑であろうが、なんだっていいじゃない。その上でよく私が言っている「本人たちが運営の思惑を超える瞬間」を通過したグループは強いってはなし。「ロック好きにすすめるアイドル」なんて、今さら誰もやらないネタなのかもしれないけど、今やるからこそ、のもの。

なので、そういうロックファン目線、バンギャ観点で、おすすめアイドルを斬って行きたいと思います。主旨が主旨なので既存アイドルファンからすると選定、視点、諸々が「おいおい」と思うかも知れませんが、ご容赦を。

インディーのアイドル、いわゆる“ライブアイドル”と呼ばれるグループです。

ヤなことそっとミュート

オルタナティヴロックファンを次々と陥落させているヤなことそっとミュート。ベースとなっているのは、90sグランジ〜オルタナサウンド。疾走感のあるバンドサウンドで緩急をつけながら、それでいて、きちんと“歌モノ”として成立させているキャッチーさ。焦燥感を煽ってくるような泣きのメロディを多用し……って、端的に言うとLUNA SEA以降のJ-ROCK/V-ROCKアプローチに通ずるところがあります。

「楽曲の元ネタを探る」というのは、アイドルポップスの聴き方における楽しみ方のひとつですが、確信犯的なオマージュというより、作曲者の血となり肉となった音楽素養が自然と滲み出ている、というのがこのグループの楽曲の特徴だと思っております。おかげでリスナーの想像力を掻き立てる、自分の聴いてきた音楽になぞらえたくなるのも大事であり。要は、いかに「深読みさせるか」それが、中年ホイホイの秘訣だったりするのです

There There Theres

「おっさんのロック青春をアイドルに託す」という手法はこの手のアイドルグループの基本ではありまして。そんなスタイルを切り開いたBERLING少女ハートの後継グループ、There There Theres

ただ、ベルハー時代はそれが思いっきりねじ曲がっていたとでも言いましょうか。かつてアイドル戦国時代なんて呼ばれていた頃、俗にいう「顔ファンじゃないし……」といった“楽曲派()”という言葉が生まれ、そこに「アイドルは成長過程を追うことこそ至福」というステータスを落とし込んだ、「クオリティの高いトラックに、不完全な女の子のボーカルが乗る」というスタイルがアイドルファンの嗜好のひとつになりました。それを、ベルハーは演者の“学芸会以下”という極端すぎるスタイルを用いて、究極のフェチズムへと深化させた感があります。

ベルハーの崩壊後、仕切り直したThere There Theresではカタギになったとでもいうか、楽曲に見合ったクオリティへと変貌しつつあります。もともと楽曲クオリティは素晴らしく、現に藤井麻輝、森岡賢によるminus(ー)が楽曲提供、プロデュースをしたという事実がそれを物語っております。

サイケデリックロック、グランジ、EBMまで、インダストリアル寄りのロックミュージック全般を網羅するベルハー時代からの楽曲群は簡潔にいえば、BUCK-TICKがやりそうな(やってきた)ことを全部やってる、と言い切っても良いかと。各楽器のサウンドも大変素晴らしく、ベースなど、「THE MAD CAPSULE MARKET’SのCRA¥かよ!」と思うことも少なくありません。

ゴシカルなおどろおどろしさも魅力であり。アイドルのステージングって、躍動感やキレ、を重視することが多いじゃないですか。でもゼアゼアのステージって、なんかヌルっとしているというか、ものすごく奇妙な動きで惹きこまれてしまうので。

BiS

大手資本に頼らないインディペントなスタイルで成功したアイドルのパイオニアでもあり、ロック系アイドルの模範であるBiS。かつての炎上商法的なアプローチもだいぶ影を潜めているので、あれが苦手だった人も安心。ええ、私がそうでしたからw

所属事務所のWACKといえば、世は今やBiSHですが。しかし、BiSHが良くも悪くもアイナ・ジ・エンドの歌が突出しているのに比べ、BiSの各メンバーのパワーバランスが分散されている面白さ。その存在と歌声がグループの象徴でもあったプー・ルイが卒業し、良い意味で混沌とした自由闊達な振り切り方は、今後ますます面白くなりそうな気がしてなりません。

アヤ・エイトプリンス、キカ・フロント・フロンタールを筆頭とした野太いヴォーカルスタイルが多いのも特徴でもあり、それは楽曲にも現れていて、WACKの中でも80sハードコア的な要素が強くなっております。松隈ケンタの作家性でもある、オリエンタルな節回しとスピード感を掛け合わせ、ズバズバっとぶった斬るようなキメの多いバンドアレンジは、MERRYと9mm Parabellum Bulletを足して、MUCCで因数分解したような、和製ハードコア風味。

高低音を強調したようなドンシャリサウンドや、マスタリングでバキバキにしたようなサウンドとは無縁の、ちょっとザラついた古めかしいパンキッシュな音像が特徴のWACKですが、それ以前にギターを筆頭とした暴力的なサウンドメイクができるのは、それに負けないメンバーの声があるからでしょう。

じゅじゅ

KERAっ子大集合〜☆ ゴシック、ロリィタ、メンヘラ…… なんでもござれ。“呪い”がコンセプトのじゅじゅ

呪いとはいっても、そこまでの和ホラーではなく、あくまでファッション要素が強いのでそんなおどろおどろしいものはないです。音楽的には、和メタルの泣きメロはしっかりと押さえており、筋肉少女帯、人間椅子からアニソン好きまで受け口は結構広いのではないかと思っております。

そして、北出菜奈のセンスを中村里砂のドール感で昇華したような、ちゅんの圧倒的な闇(病み)のカリスマオーラに跪いてしまう女子も多いのではないでしょうか。

NECRONOMIDOL

ブラックメタル、NWOBHMなサウンドで、一癖も二癖もあるようなメタラーの心を鷲掴みにしているのは、暗黒系アイドルNECRONOMIDOL(ネクロノマイドル)。もうあれこれ語るより、音とMVを観て聴いてもらうのが、すべてだと思っています。

メタル+白塗り+少女=無敵

HAMIDASYSTEM

スタンリー・キューブリックの世界観を松本零士が二次元化して、それを蜷川幸雄が舞台化したような、謎の「近未来×宇宙」感。その描かれる退廃美、妖美性が素晴らしく。HAMIDASYSTEMというグループ名も、AMEBA、SODA、BEET、FLAMEというメンバーのネーミングも『時計じかけのオレンジ』のナッドサット的な秀逸センスに思わずニヤリ。どこか近未来デザインでもあり、顔と手しか素を出していない衣装も高貴な香りとミステリアスさを際立たせ蠱惑的。メンバーのビジュアルの強さ含め、「あ、これ鉄郎が宇宙の彼方の星で、メーテルとはぐれたときに出会う女の人だ」みたいなね。

サウンド的には、乱暴な言い方をすれば“暗黒Perfume”といった趣で。エレクトロだけどどこかロック寄り、ちゃんと日本の歌モノであるということ。そして「ポップではないけどキャッチー」という、ロックファンがいちばん好きなものはしっかりと押さえています。照明、映像、そして、コンテポラリー+フォーメーションを合わせたような“交信”的なステージングもステキ。

おやすみホログラム

「アイドルという枠組みの中で、好きなことをやる」というものを最も体現しているのは、このおやすみホログラムなんじゃないでしょうか。バンド、DJ、アコースティック……形式にとらわれないライブスタイルもさることながら、カウベル持って客席に突っ込んでいくカナミルの姿は、もうアイドルのそれではなかったりするわけで。

けど、どこかフォーキーで牧歌的でもあったりして、メロディアスというわけではないけど、日本人であれば、親近感のあるメロディが多いのも特徴で。そこに似つかわしくないサウンドを叩き込んでくる、プロデューサー・オガワコウイチの手腕と、何よりも“がなる”ような2人のヴォーカルに、妙な心地よさを感じてしまうのです。総じて“邪悪なPUFFY”。

幽世テロルArchitect

“病みかわいい”をコンセプトとした、ぜんぶ君のせいだ。とか、だつりょく系げきじょう系IDOLユニット、ゆくえしれずつれづれ、とか、ピコピコでガーっとしている派手で強烈なグループが所属している事務所、コドモメンタルですが、そんな中、まったく意味がわからない(褒め言葉)のがこの、幽世テロルArchitect

正直言って、何がやりたいのかわからない。サウンドは90年代インダストリアルメタルを洗練させたような近年のデジタルハードコア路線なんだけど。よくあるじゃないですか、小難しいことやって「あとは聴く人が解釈してくれ」って、聴くほうは「それがわかる俺カッコいい」みたいな。だけどそうじゃないんだよ。たぶん、そういうこと考えてなくて、カッコイイと思うもの、詰め込みたいもの全部詰め込みました!みたいな。それでいて楽曲とサウンドは、めっちゃクオリティ高い。だから何度も聴けちゃう、聴いちゃう。とても悔しい。結論として、「クソ曲めっ!」(褒め言葉)。

CY8ER

原宿系だとかアキバ萌えとか、いわゆるアイドルの“キラキラオーラ”を、EDM、Future Bassで叩きつけてくる“Kawaii系のバイオレンス”。この手の音楽は、どうしても音圧とか派手さでインパクトを狙ったものが多かったりするのだけど、楽曲を手掛けるYunomiの丁寧かつ繊細なサウンドメイクは聴けば聴くほど、新たな発見があるような作り込み。オリエンタル風味で電波ソング的なテクノ……といった楽曲群は異様なほどに中毒性が高い。

ここに挙げてきたグループとまったく毛色の違う雰囲気のCY8ERですが、注目すべきはメンバー。水色・金髪の苺りなはむは、BiSのオリジナルメンバーであり、アキシブprojectを立ち上げ、このCY8ER自体の発起人でもあり、自らの会社ICIGOSTYLEの代表取締役社長でもある。当人はふわふわとした不思議ちゃんでもあって。注目すべきはそんな社長の元に集まった個人活動もしている精鋭メンバーたちなんですが。まぁ、キン肉マンソルジャーチームみたいなものです。よくもこんなタイプの違う女の子たちが集まったものです。

中でも今回のテーマで注目すべきは、紫色、ちょっぴりロックな?! \ヤマトナデシコ〜/ 病色やみい

ラウドロック好きで、腕や首にがっつりタトゥーが入っていて、講談社「ミスiD2017」オーディションの時にRADIOHEAD「Creep」をアカペラで歌って、30歳過ぎてアイドルになった、なんて、好きになる要素しかないだろ?

左腕に入ったアンティークなハサミのタトゥーがめちゃくちゃカッコいいんですよ!ガツガツのロックねーちゃんというわけでもなく。ほら、昔、パンクバンドとかハードコアバンドのライブ行くと、口にピアスしてたり、いかついタトゥーの入れたものすごいキレイなおねえさんがポツンと1人で、なんてよく見かけたじゃん。でも話して見たら、ものすごい物腰柔らかで。まさにあんな感じ。

「そういう子なんだ」と思って観てみると、ほら、好きになってくるだろ?

2o Love to Sweet Bullet

最後は番外編、2o Love to Sweet Bullet。この中では、かなりの正統派アイドルグループなんですけど、所属事務所がサンクレイドで、レーベルはFIREWALL DIV.。そう、言わずと知れたDIR EN GREYの事務所とレーベルです。そして、ダイナマイト・トミー氏自ら手がけているという……。ちなみに上記MVは、DIR EN GREYの数々の問題作を撮ってきたVISUALTRAPの近藤廣行氏作。

トミーさんが1から立ち上げたわけではなく、既存のグループを所属させたということらしいのですが、特典会などの2ショットチェキはトミーさんが撮っているという。。。(汗)

ちなみにフリーウィル系列は、『渋谷が大変』などでおなじみのSCUBEが、「月と太陽」、「君と僕、ときどきメランコリック」、「ワガママきいて??」といったアイドルグループを手がけています。

* * *

キリがないので、このくらいにしておきます。

最初に述べたように、このあたりのグループは都内ライブハウスなどで精力的にライブを行なっておりますので、まだ観たことない人は是非に。バンドどころじゃないほどライブ&イベントやってますし。たぶん、世間が思っているようなヲタヲタしいノリもそれほどなく、気軽にロックバンドを観る感覚で大丈夫です。観るぶんには、V系社会のようなファン同士のヒエラルキーや“圧縮”もありませんので。

スコア・ブック BBS -BiS BAND SCORE
BiS
リットーミュージック
Release: 2017/03/08

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