「椎名林檎の歌が“深い”から“不快”になったとき、また一つ人間として大きくなる」
いや、昔は好きだったんですよ、鬱ロックとか含めてね。ある意味音楽中二病の延長とでもいいましょうか。でも、歳取ってくると昔は否定してたようなメジャー感のあるものに抵抗がなくなるというか、歌謡曲に心が響くことが多くなるとでもいいましょうか。いい歳してアイドルにハマるのも典型な事例でして。
こと、アイドルやガールズ・バンドもひねくれてるというか、コアなことやってるグループも多いですが、直球・王道みたいなことを潔くやれるって凄いカッコイイと思うのです。
SCANDALのステージアクション美学
脱・制服衣装になって、ちょっとヴィジュアル系テイストになったり、そこまではよかったけど最近のパステルとヴィヴィットの共存みたいなファッションの急速なイメージ戦略はどうなんだろうなんて思ってたんですけど。
11月19日発売シングル「Image」MV、凄い良い!好きすぎる!
SCANDALは毎回楽曲にハズレはないですが、映像の質感もバッチリ。演奏シーンも後半のアメコミヒーロー(ヒロイン)的コミカルタッチも。レザーとかマスクとかブーツとかマントとか(中略)コスプレ衣装の方向性が私のこの好みだという贔屓はひとまず抜きにして()。演奏もコスプレもできる、カッコよくてカワイイって卑怯だな、おい。そら、コメント欄でも外人がフィーバーですわ。
この子らの魅力って、単純に“バンドのカッコ良さ”だと思うんです。別に難しいことやってるわけでもなく、出来ることを無理なくやって。一見、誰でも出来そうなことなんだけど、自分たちにしか出来ないものに昇華する。技術を磨くことよりも、いかにカッコよく演奏するかってことに重きを置いてる。
それはアクションやビジュアル的見え方にも現れていて、ギター/ベースのストラップの長さ、ネックの角度、という立ち絵のカッコ良さと美しさ。ストラップ長けりゃいいってもんじゃないし、スカートでも脚が長く細く見える丈があるじゃないですか、そういう黄金比率が楽器の構え方にも存在する。そして、脚の重心の掛け方、ギターのストロークと同時に右手を挙げる、ドラムフィルと同時に頭をこっちに振れば髪がバサっと舞う、あげればキリないけど、そうしたアクションの見え方とタイミングをすべて解ってる。それが堪能できますね、このMVは。
サビ前(1:09)のRINAがスティック掲げる姿でテンション上がるし、HARUNAに蹴られt(ry
いや、でもなんだかんだベースのMAMIが一番確信犯だと思ってます。あまり派手に目立ってるわけじゃないんだけど、いちいちかわいいんですよ。この子の肩をすくめてちょっと右下に顔を傾けながら弾く絶妙な角度が凄く好きなんですが。カメラに抜かれてるわけじゃないけど、時折両手離して⊂二二二( ^ω^)二⊃ってやったり。ベーシストで一番かっこいいアクションはスライドでハイポジに向かってブーンってやるヤツだと思ってるんですが。このブーンに合わせてのネックの動きとか身体ののけ反り具合とか完璧です。これがキマるベーシストは間違いなくかっこいいのです。そもそも上着の長めの袖を捲らずに指だけ出して弾いてるとかね、女性ベーシストフェチホイホイすよ。
なんか、文字に起こすと気持ち悪いくらいのこと言ってるけど、私はギターもベースもドラムもいくら上手くたってカッコよくなきゃ意味がないと思ってるタイプですので。最近、男でも上手いヤツはいても弾き方がカッコいいプレイヤー少ないからさ。布袋寅泰曰く「ギターは踊りなら弾くものだ」という感覚の世代にはたまらんのです。しかもかわいい女の子がそれやってるからね。この辺のアクション美学って、ちゃんと練習しなきゃ出来ないんですよ、好きなCDかけて姿見を見ながらひたすら練習するのです。
(アイドル+二次元)×バカテクバンド=ガチャピン
そしてこちらは打って変わって、超絶的な演奏力で魅せるバンドです。
Gacharic Spinとは?という基礎知識話は先日リアルサウンドさんで詳しく書かせて頂いてるので、良かったらご一読ください。
ベースのF チョッパー KOGAがやってたTHE PINK☆PANDAというバンドに出会ったのが衝撃でしてね。やってる音楽に関しては正直ピンとこなかったんだけど、卓越した演奏技術とパワーが凄くて。何よりストイックなバンドに対する姿勢みたいなところに心を打たれました。知り合いが対バンしてたんだけど、「あの子たち何者?」と訊いたらグラビアアイドルだというので、これまた衝撃。KOGAさんのルックスとかF チョッパーの“F”はFカップだから、という情報にはさほど興味はないんだけど、こんな子が笑顔で頭振り乱してバカみたいにスラップやってるなんて、衝撃受けないわけはない。当然のごとく、プレイヤー誌を中心に話題になっていくんだけど。
THE PINK☆PANDAを脱退したKOGA嬢が新たに組んだのが、Gacharic Spin。これが結構良かったのよ。そう言ってたのも束の間、ヴォーカル脱退で、サポートヴォーカルを色々迎えてツアー敢行したり。その頃は少し興味を失ってたんだけどね。気が付いたらドラムが歌ってるし、ダンサー入れてビジュアルも派手になってるし。でもコミカル路線に見えてやってることは殺人的にバカテクだという。ベースアンプEBSだし、ギターアンプENGLだし。
「全力エンターテイメント」と言ってるけど、「アイドル+二次元」要素を兼ね備えたバカテクロックバンドなんて、バンドの最終形態であり最強スタイルだろって。で、楽曲がハードロックの泣きメロありつつ、ひたすらキャッチーだという。舐めてかかると大火傷負います。一見、今のサブカルっぽさや、ひねくれた感じもあるんだけど、やってることを一つ一つみると、王道でメジャー感あるんですよね、混ぜるな危険の核融合っぷりがカオスなだけで。
Berryz工房のグルーヴ感
上記2つの〈アイドル性を持ったバンド〉とは逆パターンです。かつてメロン記念日が「楽器を持たないガールズバンド」なんていうキャッチコピーを掲げてたりしたんだけど。Berryz工房ってそういうバンド感を体現しているというか、各個性が各々のポジショニングを確立してそれが集まったときに起こるバンドマジックならぬ、アイドルマジック。魂がロックだとか、楽曲がロックだとか具体的な部分ではなくて、Berryzはロックバンドが持つような“グルーヴ”を感じられるんです。
11月12日発売の両A面ラストシングル、先日紹介した「ロマンスを語って」のもう片方、「永久の歌」。打って変わって、ストレートなロックナンバー。シンプルなメロディー構成がBerryzの一切被らない声質によるユニゾンの美しさを感じられる。大きめの譜割りとただの終わりではない希望を感じる歌詞、明るい楽曲だけど物悲しさすら感じてしまう。半音進行の衝き抜けたサビも相俟って、BOØWY「Dreamin’」、SIAM SHADE「Dreams」あたりを彷彿とさせるような圧倒的な勝ち誇った歌。
ラストシングルなんだからもう少し金も手間もかけろや!というのはひとまず置いておいて。逆にいえば、飾り気がないからこそ被写体の真価が問われるとでもいいましょうか。変に作り込んだものより、潔さを感じる。Berryzってこれみよがしなキレキレのダンスするグループじゃないし、余裕持って魅せつける破壊力が凄いので。先述のSCANDALじゃないけど、技術よりも見られ方を重視してる。だから歌にしてもダンスにしても、楽曲を実力で持っていってる感が凄いんですよね。この曲だって、そこまで変わった趣向や特筆するところってないんだけど、Berryzが歌うことによって楽曲全体のクオリティが格段に上がってると思う。
アイドルという総合芸術における予定調和や、与えられたものをこなす全力感とは無縁な自由奔放なグループだからこその余裕なんですよ。ダンスとか歌とかの技術を見せることとは別のベクトルなんだなぁ、すげー愉しんでる感じ。これが他アイドルには決して感じることのできない心地よいグルーヴなんだと思う。別にローリング・ストーンズやKISSに技術なんて誰も求めてないでしょ。でも問答無用にかっこいいじゃないですか、そんな感じ。
衣装やライブ演出をセルフプロデュースしてるわけだけど、細かいアドリブ入れてるのは別として、ダンス自体も結構自分たちで考えてるのかなぁと思ってみたり。Berryzの“鶴翼の陣”が好きなんですよね。これでいうとサビのフォーメーション(1:02〜)。無敵だよね。