ヴィジュアル系とアイドルの魅せ方とセルプロデュース力

近年は、自然体、等身大、素のまま、ありのままのアーティストが好まれたり、余裕よりも全力が好まれたり。演者のライブ組み立てもどこかフェスやイベント特化型になりがちで。30分くらいのステージが当たり前になっていて、いざワンマンの90分〜120分のライブ規模になると、見せ場を含めた抑揚の折り合いがつかず、着火点を見失ったまま終演を向かえてしまう、というライブも少なくはなかったり。

パフォーマンス自体もライブハウスに慣れすぎちゃって、ホールに立ったときに広いステージや会場による視覚効果を使いこなせていない演者を観ることは、まぁ、よくあることなのですが。ここ最近は、制作側もそうした広い空間を活かしきれていないことも少なくはないです。ステージも、演出も、音響も、、、ここはライブハウスとは違うのだよ!って思うことが。規模が大きくなれば、それなりの演出なり舞台監督なり、予算や手間は掛けて欲しいところです。

もちろん、「どこでやっても変わらねぇぜ」といった小細工なしの音だけで勝負するという意気込みで挑むのもアリだけど、それがきちんと成立するのってごく限られたジャンルや、それなりの経験値を積んできたアーティストだけなんじゃないかと思うのです。

「観て楽しませる」という視覚的な部分も大きな魅力となっている総合芸術エンターテインメトといえば、ヴィジュアル系とアイドル。この2つは音楽ありきとはいえど、同じくらい見た目も大事。世界観が大事。

ここ最近、そんな2ジャンルの象徴的なワンマンライブを見ました。

the GazettE Live Tour18 THE NINTH / PHASE #01-PHENOMENON-

リアルサウンドにてthe GazettEのライブ評を担当 しました。このバンドを見ていつも思うのは「ズル賢い!」(褒め言葉)ということ。その昔「ロックはいかにオーディエンスを騙すことができるかが大事」なんていう、今だったら炎上しそうな海外ロックスターの発言もあったりしたんだけど。そんな近年忘れかけている「ステージに上がる=演じる」ことを思い出させてくれるのが、the GazettEだったりします。

ヴィジュアル系自体が“魅せ方”における究極の美学として生まれ発展していったことは言わずもがな、私がかつてヴィジュアル系事務所で制作をやっていた頃に学んだことは「衣装に予算かけられないならヴィジュアル系やるのやめちまえ」ということ。ライブ演出しかり。「ありのままの自分で」「シンプルに」なんて言いだしたらそれこそ、ヴィジュアル系やってる意味ないし。the GazettEの毎度のことながらのアートワーク周りしかり、この日の派手な照明とステージ演出は素晴らしく、大袈裟でキザなパフォーマンス……こんなに“カッコつける”ことが上手いバンド、そういないよ。これって、我々がガキの頃に騙されたロックスターの姿と同じなんだよなぁって。

CY8ER 4th one-man LIVE ~ SOUND OF ME ~

アイドルといえば古くから、良くも悪くも「大人の敷いたレールの上を、」といった“ザッツ・芸能界”なイメージがあるものの、今やすっかりシーンの一角を担っている地下アイドル〜ライブアイドルといった、インディーアイドルのシーンは少し違った様相にもなっております。そんな中でも、“セルフプロデュース”という意味で頭1つ飛び抜けているのが、このCY8ER。中田ヤスタカ直系のテクノ〜フューチャーベースサウンドは、どこのライブハウスでも鮮明なサウンドを轟かせる本格派であり、“カワイイ”の中にぶち込まれる暴力性と垣間見える猟奇的な刃のような斬れ味にただ跪くしかない中毒性。

この日のワンマンはここぞとばかりのド派手な演出。全身の毛穴が開くほどの爆音&低音、ビュンビュン飛び交うレーザー演出。最近「アイドルとはなんなのか」なんてことを考えさせられる場面によく遭遇するのですが、この日もまたそんなことを考えてしまった。もう、セルフプロデュース、自主制作の次元ではないライブでした。




CY8ERは、よくある「ロック好きおっさんプロデューサーが手掛ける〜」という形式ではなく、メンバーである苺りなはむが所属事務所の社長を兼任しながらトータルプロデュースを行っていくというスタイルで。サウンドはYunomi、演出はhuez、衣装はBALMUNG、といった、「餅は餅屋に」という役割分担采配が見事な手腕。セルフプロデュースというと、なんでも自分でやるという思考に陥りやすいのですが、人に任せたほうが良いものが出来るのならそちらを選んだほうがいい、という見極めもセルフプロデュース力なんですよね。なんでも自分でやる“DIY精神”は大事ですが、そこだけに変に固執しているだけじゃ、良いものは生まれません。

次回のワンマンは六本木EX THATERということで、ちゃんと音響&演出にこだわった会場選びをしているところ含め、やってることがいちいちハイセンス。いろんな意味で今後ますます面白くなってくるグループだと思います。

NINTH(完全生産限定盤)(Blu-ray Disc付)
NINTH(完全生産限定盤)(Blu-ray Disc付)
the GazettE
label
Release: 2018/06/13

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