ベース・マガジン12月号 でレビューを担当させていただき出会ったアルバム、7!!!あらため、seven oops『songs for…』。ヴォーカルのNANAEさんがテレビ神奈川「saku saku」のMCをやっていたり、その存在とどんなバンドなのかはなんとなく知っていたのだけど、アルバムを通してちゃんと聴いたのはこれがはじめてで。その時から持っていたイメージを完全に裏切られました。なんだこれ、日本語女性ヴォーカル作品として、最高峰レベルなんじゃね? と思ったのも大袈裟な話ではなく。
とにかく歌に惹き込まれる。少女のような麗らかな声から大人の艶っぽい声まで、楽曲と言葉に合わせて声質と表情、そして倍音すらも操るようなNANAEの歌声が素晴らしくて。技術や声量で引っ張るタイプではなく、自分の声の鳴らし方を知り尽くしているヴォーカリストなんだなと実感。と同時に詞と楽曲が持つものを直感的に汲み取って表現するのが上手い人なのだとも。M3「記憶」の澄んだような高音と、M8「夏のロマンティカ」の鼻をつまんだような艶めかしさがとくに好き。
シティポップあり、ソウルあり、フォークにカントリー、デキシーテイストなどなど、全曲ジャンル的な方向性の被りがないという意欲さを見せつつも、とっちらかった印象を受けないまとめ上げ方も素晴らしく。これだけ風呂敷を広げているのに、もろに洋楽影響下を感じるわけでもないし、かといって今どきのJ-POPでもない。普遍的な日本のニューミュージックという趣きでとても親しみやすい。ブラスアレンジも多いのだけれど、生ホーンでなくわざと鍵盤で演奏している感を出したアーシーな雰囲気もすごくいい。なんて思っていたら、バンドと共同プロデュースのクレジットに鈴木俊介氏の名前があってニヤリと納得。ハロプロヲタクとしては、この人のファンクとブラスはつんく♂曲と一心同体、完全に血と肉になっております。seven oopsとも関わりは長いようですね。
なんとなく持っていたイメージと違っていたのは、多くの楽曲を手掛けていたギタリストの脱退も大きいようで。遡って聴いて見たら、弾けるようなガーリーでポップな曲が多かった。だけど、作品を重ねるごとにグッと落ち着いてきた兆しもあったから、この路線はある意味自然だったのかなとも。
いい女性ヴォーカルにはいいベース、ということをベース・マガジンでも触れておりますが、ドラムもこれがまたいい仕事してるんですよね。ものすごくタイトにバシバシキメてくるのが心地よい。藤井麻輝(minus(-))の「女性ドラマーはRoland TR-808っぽい」なんていう発言を歌モノバンドで思い出すとは。スコーンと抜けてくるスネア。ここは好みだと思うけど、私はハイピッチのスネアが好きではないので、このスネアの抜け方は大好物です。
で、マスタリングがパラサイトスタジオの滝口“Tucky”博達氏とくれば、ハズレがあるわけない。ELLEGARDENやマキシマム ザ ホルモンをはじめ、近年はBABYMETALといったヘヴィサウンドが有名な氏ですが、海外チックなレンジの広さは歌モノにもバッチリ合うんですよ、大好きなエンジニアさんです。
アルバムとしてのトータルバランスは絶妙なんだけど、反面でズバ抜けて印象の強い楽曲やメロディの主張を感じることはなく。ずっと聴いてきたファンにとってはもの足りなさを感じるのかもしれない。でも、流行廃り関係なく、飽きることなくこの先も長く聴いていられるのって、こういうアルバムなんですよね。