非オーディオマニアに捧ぐ “SHM-CD”の誤解

SHM-CD(スーパー・ハイ・マテリアルCD)という高品位CDが2007年に発売され話題になりました。最近はプラチナSHMというものも出てきました。詳細は省きますが、要はマスタリングなどで音データをいじるのではなく、メディア自体の素材に着目して音質向上を目指したもの。前者はCD規格ですが、後者はそれを発展させ、突き詰めたが故に、皮肉にもCD規格外になってしまったという……。Blu-spec CDというものもありますが、製造メーカーが異なるだけで同列のものです。

さてさて、このSHMの類いですが、本当に音質向上は得られているのでしょうか?

一部のオーディオマニア/音楽ファンの間では、結論が出ていますが。今、プラチナSHMが登場し、誤解や勘違いしてる人も多いようなので、改めて考えてみましょう。音楽好き、いろんな音楽を聴いている人(自称含む)、マニアとまではいかないけれどオーディオ機器にある程度のこだわりを持っている人(自称、願望含む)、関心はあるけど専門的なことはよく解らない…、 そういった人たちのために。オーディオ関連の解説は詳しくなればなるほど、退屈な話になるし、解りづらくなるし。ですので、専門用語や数字、深いところはなるべく回避して簡潔に説明していきます。だから、マニアな人は怒らないで。

では、結論から言いますと、SHMと通常のCDは基本的に同じ音質です。
ただ、再生環境によっては違いが感じられる場合があるかも? ということです。

えええー!?なんだってーー。

デジタルの意味を理解する

CDはデジタルであり、光でデータを読み取っています。レコードやカセットテープなどのアナログと違い、メディアと非接触で読み取りを行うため、何回聴いたところで劣化はしません。SHMが「高音質」とされる所以はこの、“読み取り”の正確性です。通常、CDプレイヤーで再生する場合、このデータの“読み取り”と音の“再生”を同時に行なっています。ただ、この読み取りは完璧ではなく、時にエラーが生じます。そのエラーによる“音飛び”を防止するための補正が同時に行なわれているのです。つまりは、リアルタイムで「読み取り+補正→再生」を行なっていることになります。よって、読み取りを正確に行ない、エラーを極力回避することが出来るのなら、補正する負荷が少なくすみ、再生の安定に繋がる。であるなら、CDプレイヤーが読み取りやすいようにメディア自体の品質をあげよう、これがSHMのねらいです。ただ、この補正による負荷がどれだけ音質に影響するのかは、正直よく解っていませんし、ちゃんと調べる術もないのです。それこそ再生機種による誤差もあるだろうし。SHMの特性は、音質向上というよりも、再生の補正によって起こり得る音質低下を極力防ぐという言い方のほうが正しいかと思います。

iTunesなどで、パソコン等に取り込む場合、データを読み取るだけで再生する必要はありませんよね。アナログ録音のように音量調整も必要ないですし、ただCDに収められているデータをちゃんと読み取ることができれば良いのです。デジタルの世界は“2進数”です。0か1、つまりデータがあるかないかの2つしかないのです。そこにSHMのメリットである読み取りの正確性は関係ありません。データの取り込みの際にも「読み取り+補正」が行われているので、メリットがあるとするなら、取り込み時間が早く済むことでしょうか。つまり、同じ音源であれば、メディアの種類に関係なく、取り込んでしまえば同じデータになるのです。PCオーディオの利便性は、プレイヤー再生のように毎回読み込むのではなく、一度取り込んでしまえばいつでも安定した音源データを再生出来ることでもあります。

でも、音が良い場合もあるSHM

でも、SHM聴き比べの類いで、音が良いっていろんなところで絶賛されてるよ? ハイ、私も最初は騙されたクチです。SHM-CDが発売されたとき、多くのタイトルは旧譜盤の再発でした。これが盲点。そう、ちゃっかりマスタリングし直されているのです。有名エンジニアによるうんたら、といった大々的なモノではなく、ちゃんと聴き比べないと解らないレベルの。レコード会社の社名変更、再編などで、旧譜が再リリースされる度に、僅かながら細工されている事例も過去にあったのに、何故にそこに気が付かなかったのか。オーディオの世界はプラシーボ効果の連続であるとはよく言ったものです。ただ、これは音質向上とは少し違うベクトルですけどね。低音を強調したり、音量を上げたり、パっと聴いた感じ音質が良くなったように思わせる、悪く言えば、音の改ざんとでもいうべきでしょうか。

なんだよ、それじゃ騙しかよ! と思うかもしれませんが、別に騙してるわけでもないと思います。今でこそ、それほど酷いものはなくなったけど、ケチってノーブランドのCD/DVD-Rバルク買ってきて、焼いたらエラーが出るわ、焼けたものはこっちのパソコンだと認識すらしない……、なんてこともあったかと。「安心と信頼の太陽誘電(That’sブランド)」と言われたように、メディアの材質や加工精度による安定性は確実にあるとは思います。ただ、それは音質とは別の話ですが。

音楽用CD-Rのカラクリ

「音楽用CD-R」として売られてるものがありますが、あの類いがデータ用CD-Rより高く売られているのは、私的録音録画補償金制度というものがあり、販売価格に著作使用料が加算されているのです。ぶっちゃけ、データ用と全く同じ製品を商品名とパッケージだけ変更して、高い価格で売っているものが多く存在しているのも現状です。だから「音楽用」だから音が良いとか、エラーが出にくい、なんてことはありえませんので。「録画用DVD-R」も同様です。ただ、プロの原盤制作におけるマスター納品として多く使用されるもの(“That’s CD-R for Master”など)は、精密に作られているので、エラーはないに等しく、安定性はあります。

パソコンにおけるCDドライブによる違い

DVD/CDドライブにおいて、安心と信頼が寄せられているものは、パイオニア製ですね。理由は社名の通り、この分野のパイオニアであること、日本製であることなど。CD-R専用よりもDVD-Rのほうが、それよりもBlu-Rayのほうがレンズの性能が上とされています(諸説あり)。ただ、やはり読み取りに関しては、結局どこでも同じなので、書き込みの性能や速さ、長期的に見た耐久性などおける信頼性です。安いドライブはすぐ壊れますからね。ただ、パイオニア製ドライブとパソコンを使って、音源を取り込まずにプレイヤーとしてCDを聴く、独自のこだわりを持つ人もいます。

まとめると、

[box class=”box1″]

  • リスニング環境によってSHMが高音質に感じられる場合もある(CDプレイヤー再生時)
  • PCオーディオメインの人は固執する必要性は得にない
  • とは言え、SHMには別マスタリングが施されている場合があるので、音質が良くなっているものも存在する
  • [/box]

    可逆圧縮と非可逆圧縮

    補足として最後に、iTunesを中心とした音源取り込み、圧縮音源の話をしておきますね。

    圧縮ファイルには、可逆圧縮(ロスレスなど)非可逆圧縮(AAC、MP3など)があります。

    可逆圧縮は独自のアルゴリズムを用い、暗号化することによって、情報をそのままに容量だけを減らすもの。元データと音質は同等であり、いつでも元に戻すことが可能です。音データに限らず、ZIPなどもこちらの形式になります。対し、非可逆圧縮は見た目だけを保持して別物にしてしまうという形式。原型を損なわない程度にデータを削ぎ落とすので、元データに戻すことはできません。

    もっとわかりやすく言えば、文字数が限られている文章において、〈1+1+1+1+1+1〉という表現を〈2×3〉と表記するのが、可逆圧縮。同じ情報量である“6”を表すのに、1/3以下の文字数(データ量)で済みます。対する非可逆圧縮は“6”を画像にしてしまいます。文字数はかなり省けますが、全く別のものですね。極端に言ってしまえば、情報の意味さえわかれば良いというようなもので、応用性はないです。

    じゃ、SHMって買う価値あるの?

    最近、とある同じ新譜タイトルをプラチナSHM盤と通常盤、両方買ってみました。いろいろな環境で聴き比べてみた結果、プラチナSHMのほうが高音域が澄んで聴こえる気もしました。それがマスタリングの違いで差をつけているものなのか。個人的にはそういうこと考えるのはもうやめようと思っています。ただ、盤面自体はプラチナSHMのほうがキラキラしていて、製品として明らかに高級感漂うモノでカッコイイんですよ。だから、これはこれでありなのだと思いました。

    オーディオはオカルト話、プラシーボ効果の連続、結局はリスナーの耳と満足感次第ですから。

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    非オーディオマニアに捧ぐ “SHM-CD”の誤解

    SHM-CD(スーパー・ハイ・マテリアルCD)という高品位CDが2007年に発売され話題になりました。最近はプラチナSHMというものも出てきました。詳細は省きますが、要はマスタリングなどで音データをいじるのではなく、メディア自体の素材に着目して音質向上を目指したもの。前者はCD規格ですが、後者はそれを発展させ、突き詰めたが故に、皮肉にもCD規格外になってしまったという……。Blu-spec CDというものもありますが、製造メーカーが異なるだけで同列のものです。

    さてさて、このSHMの類いですが、本当に音質向上は得られているのでしょうか?

    一部のオーディオマニア/音楽ファンの間では、結論が出ていますが。今、プラチナSHMが登場し、誤解や勘違いしてる人も多いようなので、改めて考えてみましょう。音楽好き、いろんな音楽を聴いている人(自称含む)、マニアとまではいかないけれどオーディオ機器にある程度のこだわりを持っている人(自称、願望含む)、関心はあるけど専門的なことはよく解らない…、 そういった人たちのために。オーディオ関連の解説は詳しくなればなるほど、退屈な話になるし、解りづらくなるし。ですので、専門用語や数字、深いところはなるべく回避して簡潔に説明していきます。だから、マニアな人は怒らないで。

    では、結論から言いますと、SHMと通常のCDは基本的に同じ音質です。
    ただ、再生環境によっては違いが感じられる場合があるかも? ということです。

    えええー!?なんだってーー。

    デジタルの意味を理解する

    CDはデジタルであり、光でデータを読み取っています。レコードやカセットテープなどのアナログと違い、メディアと非接触で読み取りを行うため、何回聴いたところで劣化はしません。SHMが「高音質」とされる所以はこの、“読み取り”の正確性です。通常、CDプレイヤーで再生する場合、このデータの“読み取り”と音の“再生”を同時に行なっています。ただ、この読み取りは完璧ではなく、時にエラーが生じます。そのエラーによる“音飛び”を防止するための補正が同時に行なわれているのです。つまりは、リアルタイムで「読み取り+補正→再生」を行なっていることになります。よって、読み取りを正確に行ない、エラーを極力回避することが出来るのなら、補正する負荷が少なくすみ、再生の安定に繋がる。であるなら、CDプレイヤーが読み取りやすいようにメディア自体の品質をあげよう、これがSHMのねらいです。ただ、この補正による負荷がどれだけ音質に影響するのかは、正直よく解っていませんし、ちゃんと調べる術もないのです。それこそ再生機種による誤差もあるだろうし。SHMの特性は、音質向上というよりも、再生の補正によって起こり得る音質低下を極力防ぐという言い方のほうが正しいかと思います。

    iTunesなどで、パソコン等に取り込む場合、データを読み取るだけで再生する必要はありませんよね。アナログ録音のように音量調整も必要ないですし、ただCDに収められているデータをちゃんと読み取ることができれば良いのです。デジタルの世界は“2進数”です。0か1、つまりデータがあるかないかの2つしかないのです。そこにSHMのメリットである読み取りの正確性は関係ありません。データの取り込みの際にも「読み取り+補正」が行われているので、メリットがあるとするなら、取り込み時間が早く済むことでしょうか。つまり、同じ音源であれば、メディアの種類に関係なく、取り込んでしまえば同じデータになるのです。PCオーディオの利便性は、プレイヤー再生のように毎回読み込むのではなく、一度取り込んでしまえばいつでも安定した音源データを再生出来ることでもあります。

    でも、音が良い場合もあるSHM

    でも、SHM聴き比べの類いで、音が良いっていろんなところで絶賛されてるよ? ハイ、私も最初は騙されたクチです。SHM-CDが発売されたとき、多くのタイトルは旧譜盤の再発でした。これが盲点。そう、ちゃっかりマスタリングし直されているのです。有名エンジニアによるうんたら、といった大々的なモノではなく、ちゃんと聴き比べないと解らないレベルの。レコード会社の社名変更、再編などで、旧譜が再リリースされる度に、僅かながら細工されている事例も過去にあったのに、何故にそこに気が付かなかったのか。オーディオの世界はプラシーボ効果の連続であるとはよく言ったものです。ただ、これは音質向上とは少し違うベクトルですけどね。低音を強調したり、音量を上げたり、パっと聴いた感じ音質が良くなったように思わせる、悪く言えば、音の改ざんとでもいうべきでしょうか。

    なんだよ、それじゃ騙しかよ! と思うかもしれませんが、別に騙してるわけでもないと思います。今でこそ、それほど酷いものはなくなったけど、ケチってノーブランドのCD/DVD-Rバルク買ってきて、焼いたらエラーが出るわ、焼けたものはこっちのパソコンだと認識すらしない……、なんてこともあったかと。「安心と信頼の太陽誘電(That’sブランド)」と言われたように、メディアの材質や加工精度による安定性は確実にあるとは思います。ただ、それは音質とは別の話ですが。

    音楽用CD-Rのカラクリ

    「音楽用CD-R」として売られてるものがありますが、あの類いがデータ用CD-Rより高く売られているのは、私的録音録画補償金制度というものがあり、販売価格に著作使用料が加算されているのです。ぶっちゃけ、データ用と全く同じ製品を商品名とパッケージだけ変更して、高い価格で売っているものが多く存在しているのも現状です。だから「音楽用」だから音が良いとか、エラーが出にくい、なんてことはありえませんので。「録画用DVD-R」も同様です。ただ、プロの原盤制作におけるマスター納品として多く使用されるもの(“That’s CD-R for Master”など)は、精密に作られているので、エラーはないに等しく、安定性はあります。

    パソコンにおけるCDドライブによる違い

    DVD/CDドライブにおいて、安心と信頼が寄せられているものは、パイオニア製ですね。理由は社名の通り、この分野のパイオニアであること、日本製であることなど。CD-R専用よりもDVD-Rのほうが、それよりもBlu-Rayのほうがレンズの性能が上とされています(諸説あり)。ただ、やはり読み取りに関しては、結局どこでも同じなので、書き込みの性能や速さ、長期的に見た耐久性などおける信頼性です。安いドライブはすぐ壊れますからね。ただ、パイオニア製ドライブとパソコンを使って、音源を取り込まずにプレイヤーとしてCDを聴く、独自のこだわりを持つ人もいます。

    まとめると、

    [box class=”box1″]

  • リスニング環境によってSHMが高音質に感じられる場合もある(CDプレイヤー再生時)
  • PCオーディオメインの人は固執する必要性は得にない
  • とは言え、SHMには別マスタリングが施されている場合があるので、音質が良くなっているものも存在する
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    可逆圧縮と非可逆圧縮

    補足として最後に、iTunesを中心とした音源取り込み、圧縮音源の話をしておきますね。

    圧縮ファイルには、可逆圧縮(ロスレスなど)非可逆圧縮(AAC、MP3など)があります。

    可逆圧縮は独自のアルゴリズムを用い、暗号化することによって、情報をそのままに容量だけを減らすもの。元データと音質は同等であり、いつでも元に戻すことが可能です。音データに限らず、ZIPなどもこちらの形式になります。対し、非可逆圧縮は見た目だけを保持して別物にしてしまうという形式。原型を損なわない程度にデータを削ぎ落とすので、元データに戻すことはできません。

    もっとわかりやすく言えば、文字数が限られている文章において、〈1+1+1+1+1+1〉という表現を〈2×3〉と表記するのが、可逆圧縮。同じ情報量である“6”を表すのに、1/3以下の文字数(データ量)で済みます。対する非可逆圧縮は“6”を画像にしてしまいます。文字数はかなり省けますが、全く別のものですね。極端に言ってしまえば、情報の意味さえわかれば良いというようなもので、応用性はないです。

    じゃ、SHMって買う価値あるの?

    最近、とある同じ新譜タイトルをプラチナSHM盤と通常盤、両方買ってみました。いろいろな環境で聴き比べてみた結果、プラチナSHMのほうが高音域が澄んで聴こえる気もしました。それがマスタリングの違いで差をつけているものなのか。個人的にはそういうこと考えるのはもうやめようと思っています。ただ、盤面自体はプラチナSHMのほうがキラキラしていて、製品として明らかに高級感漂うモノでカッコイイんですよ。だから、これはこれでありなのだと思いました。

    オーディオはオカルト話、プラシーボ効果の連続、結局はリスナーの耳と満足感次第ですから。

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