メジャーとインディーズの違い、海外と日本のレコード会社の違い

【2014年11月修正】
2013年7月に執筆したものですが、その後のレーベル社名変更、再編などの動きを踏まえて2014年11月現在の市場に合わせて加筆・修正しました

中々解りにくい、メジャーとインディーズの違い、そして海外と日本のレコード会社の違いなどをまとめてみました。ただ、読めば読むほど解りづらい内容かもしれません。自分で改めて文字にしたら途中で訳解らなくなって来ました(おい

インディーレーベルとは?

海外では“BIG 3(3大メジャー)”と呼ばれるレコード会社以外は全て“インディーレーベル”と呼ばれています。そもそも“Independent, Indie(インディペンデント、インディー)”とは「独立、どこにも属さない」という意味。つまり、大手資本ではない独立型のレーベルがインディーレーベルであり、日本でいうところの、DIY精神に基づく“インディーズレーベル”とは少しニュアンスが異なります。勿論、海外にも“インディーズレーベル”と呼べるスタイルのレーベルは存在しますが、“インディーズ”という言葉が和製英語なので。(参考記事:インディーロックの“インディー”ってなに?

海外におけるメジャーの定義は「自社内で製造・国内流通を全て賄える」こと。ただ、メジャーレコード会社といってもグループ会社ですので、大体の有名レーベルはどこかしらの会社に所属している場合が多いです。(世界的なメジャーの売上シェアは約7割)

3大メジャーの代表的なレーベルをあげておきます。(2014年11月現在、全部じゃないよ)

Universal Music Group(UMG:ユニバーサル ミュージック・グループ)

Island Records
Interscope Geffen A&M
Def Jam Recordings
Capitol Music Group
Blue Note Records
Republic Records
Universal Music Group Nashville
Universal Music Classics
The Verve Music Group
Astralwerks Records
Universal Music Enterprises
Universal Music Latin Entertainment
Virgin EMI Records
Virgin Records

Sony Music Entertainment (SME:ソニー・ミュージックエンターテインメント)

Columbia Records
RCA Records
Epic Records
Sony Music Nashville

Warner Music Group (WMG:ワーナー・ミュージック・グループ)

Atlantic Records Group
Warner Bros. Records
Rhino Entertainment
Parlophone
Warner Music Nashville

日本におけるメジャーレコード会社とは?

日本で〈メジャーレコード会社〉と呼ばれる定義は明確に決められているわけではありません。ただ、「日本レコード協会に加盟していること」が一つの判断基準として暗黙の諒解になっています。海外の定義で今の日本のメジャーレコード会社を考えるのならば、3大メジャーのユニバーサルワーナーソニー(日本のソニーは厳密にいうと3大メジャーには属さない、後述)、それに加えてエイベックスを含めた4社くらいでしょうかね。ただ、日本のレコード会社を海外のそれと並べて考えるのは難しいわけでして。

そもそも海外におけるレコード会社は同じジャンル、似た趣向を持ったアーティストが集まり、レーベルとなり、その規模が大きくなってレコード会社となった。方や我が国の場合、電機メーカーなどの資本によりレコード会社が設立され、レコードを売るためにアーティストを探した、という経緯があるからです。

簡単に日本のレコード会社とその歴史を簡単にまとめてみましょうか

日本のレコード会社の発展

1910年にアメリカ人、K.H.ホーンによって日本初のレコード会社、日本蓄音機商会が設立。その後、27年にColumbia Records(米・コロムビア)に子会社化されたのち、46年に日本コロムビアが誕生。

同27年にレコードを開発したアメリカの〈The Victor Talking Machine Company〉の日本法人として日本ビクター蓄音器を設立。

同27年に阿南商會、銀座十字屋がDeutsche Grammophon(独:グラムフォン)の日本国内での製造権利を元に日本ポリドール蓄音器を設立。

その他、31年に帝國蓄音器商會(現・テイチク)設立。
37年に講談社(当時・大日本雄辯會講談社)が音楽部門としてキングレコードを設立。

これらのレコード会社が当時の流行歌・軍歌・戦時歌謡を中心とし、日本の音楽市場の黎明期を創り上げた。

戦後、日本コロンビアよりリリースした美空ひばりの登場により、大衆文化の一つとして歌謡曲が広まり、各レコード会社は第二の美空ひばりを探すようになる。これにより日本の音楽市場は高度経済成長期とともに次第に発展していくようになった。

60年代に入ると、高度経済成長期により発達した技術力と、“ポップス・ロック・フォーク”という洋楽を取り入れた新たなレコード会社が誕生。日本を代表する電機メーカーと海外レコード会社の合併会社、CBSソニー、東芝EMI、日本フォノグラム、ワーナー・パイオニアが相次いで設立され、6,70年代の洋楽ブームの発端となる。

一方、国内資本では、徳間書店がミノルフォン(現・徳間ジャパンコミュニケーションズ、現在は第一興商グループ)、フジサンケイグループのキャニオンレコード(現・ポニーキャニオン)など他業種によるレコード会社設立も続いていく。

さて、ここで始めて日本初の欧米独立型のインディペンデントレーベルが誕生する。

1975年、ポリドールの井上陽水、CBSソニーの吉田拓郎、泉谷しげる、小室等が日本で始めてのアーティスト主導のレコード会社を設立した。フォーライフ(現・フォーライフ ミュージックエンタテイメント)である。当時、この4人だけで売上総額60億円とも言われ、独立から設立に至るまでのレコード会社との攻防戦はいかほどのものだったか考えただけでも恐ろしい。

このフォーライフの設立が日本の音楽市場において大きく転機となり、その後、ファンハウス、ポリスター、トイズファクトリーなどの独立型レコード会社が数多く設立されていきます。

現在の日本のメジャーレコード会社

ここまでの段階で、如何に日本のレコード会社の設立・発展の経緯が複雑であるかが解ったと思います。この後、再編・合併・M&Aを繰り返していくわけですが、現在の日本レコード協会正会員17社(2014年11月現在)を、ある程度の資本基準で分けてみます。これはあくまで目安として私個人の見解で分けているだけなので、特にこういう区分があるわけでも、これが正しいわけでもありません。

〈外資系〉
ユニバーサル ミュージック合同会社
(フランスのメディア企業、ビベンディ傘下である、米 ユニバーサル ミュージック・グループの日本法人)
株式会社ワーナーミュージック・ジャパン
(米 ワーナー・ミュージック・グループ傘下)

〈国内資本〉
▼電機メーカー系列
株式会社JVCケンウッド・ビクターエンタテインメント
(現在はJVCケンウッド100%株主の傘下)
株式会社テイチクエンタテインメント
(現在はJVCケンウッド96.1%株主の子会社)
株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント
(日ソニー100%株主のソニーグループの音楽部門であり、米SMEとは経営も全く異なる別会社)
 
▼メディア出版社系列
キングレコード株式会社
(講談社の音楽部門として設立)
株式会社ポニーキャニオン
(フジサンケイグループ)
株式会社バップ
(日本テレビホールディングス株式会社の子会社)
 
▼その他通信コンテンツ系列
日本コロムビア株式会社
(現在はコンテンツ配信サービス企業・株式会社フェイスのグループ会社)
日本クラウン株式会社
(現在は第一興商傘下)
株式会社徳間ジャパンコミュニケーションズ
(現在は第一興商傘下、徳間書店とは業務提携関係)
 
▼独立型
株式会社ビーイング
エイベックス・マーケティング株式会社
株式会社フォーライフ ミュージックエンタテイメント
株式会社ドリーミュージック・

 
▼マネジメントオフィス系列
株式会社ヤマハミュージックコミュニケーションズ
株式会社よしもとアール・アンド・シー

ここ数年の合併等の動きを見れば、ビクターエンタテインメントとテイチクがJVCケンウッドの傘下になったり、コロムビアが日立から投資ファンドであるリップルウッド、そしてコンテンツ配信企業のフェイスに買収されたり、クラウンと徳間が第一興商傘下になったりと、そもそもの設立経緯からは掛け離れている場合が多く見られます。それでもブランドとして昔ながらの会社名を残している場合が多いので、ややこしいですが。いくら再編されてもレコード会社が主となっている海外とは違い、他業種含めた日本独特の複雑な成り立ちが解りますね。

さて、メジャーとされる一つの判断基準となっている日本レコード協会の会員制度。上記は正会員を上げましたが、3段階に別れております。

  • 正会員(正味出荷金額5億円以上の法人)
  • 準会員(それ以下の出荷金額)
  • 賛助会員(正・準会員へ販売委託(もしくは資本系列)し、正・準会員の推薦を受けた法人)
  • では、正会員をメジャーと解釈するのであるのなら、準会員・賛助会員はどういう扱いになるのか?

    ソニー系列のレコード会社、株式会社ソニー・ミュージックレーベルズ(SMEレコーズ、エピック、キューン、デフスター、などが2014年に統合)は賛助会員なのです。もし、正会員しかメジャーでないとすると、この系列会社はインディーズになってしまいます。母体のソニー・ミュージックエンタテインメントが正会員なのだから、と言ってしまえばそれまでなんですが。同様にエイベックスの販売会社であるエイベックス・マーケティング株式会社は正会員、制作会社のエイベックス・エンタテインメント株式会社は賛助会員。

    トイズファクトリーは2013年に入って初めて協会に加入し、賛助会員になりました。トイズは1990年にバップから独立した形で設立。流通を持たない制作専門の会社です。バップと資本提携は一切ないものの、流通はバップに委託してましたので、設立当初より非会員でありながらメジャーレコード会社として扱われてきました。準会員・賛助会員社は様々であり、映画制作の東宝株式会社(準会員)もいれば、VOCALOID楽曲管理を行う株式会社自主制作コンテンツ出版管理機構(賛助会員)、ソニーのマネジメント/出版会社の株式会社ソニー・ミュージックアーティスツ(賛助会員)など、レコード会社ではない会員社も多くあります。

    すでに解りづらい構図だと思いますが、更に解りづらい点が色々あります。

    日本レコード協会の会員資格が〈正味出荷金額〉であること。売上ではありません。つまり、資本金や会社の規模は関係ありません。制作はしても販売・流通を持たない会社があり、そういった小規模な会社でも音源タイトルを多く制作すれば、〈正味出荷金額〉が得られ、日本レコード協会正会員の資格が得られるということです。上記17社でも自社ビルや地方に営業所を持ち、数百人の社員がいる大規模な会社もあれば、都内のみにオフィスを構える数十人で運営されている小規模会社もあります。

    解りやすく、レコード会社の代表的な業務を3つあげてみます。あくまで判断基準としての分け方です。

    1. 制作(音源タイトルを企画、レコーディングする)
    2. 販売(音源商品タイトルの製造・出荷管理、販促・宣伝など)
    3. 流通(小売店に卸す、厳密にいうとNRC/JAREDに送る)

    2と3の違いが解りにくいかと思いますが、〈2.販売〉は販売促進を行い、小売店からの注文数、製造枚数を管理する、〈3.流通〉はその商品の現物自体を取り扱う、というニュアンスで考えてもらえれば。小規模なオフィスに数万枚の複数タイトルの現物を置くというのは無理がありますよね。ですから、そういった場合は〈2.販売〉の管理は行っても、〈3.流通〉は他社に委託するという形を取っています。

    ですので、1〜3すべてをまかなうことの出来る大規模なレコード会社は数社で、実際は〈1.制作〉〈2.販売〉のみ、もしくは〈1.制作〉だけに特化した小規模会社が多く、〈2.販売〉〈3.流通〉を大規模な会社に委託しているというケースが多く存在しています。

    マネジメント事務所系列を例に挙げます。ジャニーズ事務所のジャニーズ・エンタテイメントは制作のレコード会社で、準会員です。販売・流通はSMEのソニー・ミュージックマーケティングに委託しています。アミューズソフトエンタテインメントも準会員。中島みゆき率いる、ヤマハミュージックコミュニケーションズは正会員ですが、制作の会社なので、販売・流通はエイベックス。ハロプロで有名なアップフロントグループも制作会社、かつてはソニー、キングなどに販売・流通を委託していましたが、2012年から自社グループに株式会社アップフロントワークスを設立。現在は販売を自社で、流通をソニー、ポニーキャニオンなどで行っています。アップフロント自体はそもそも会員社ではありません。

    これらの事例を見れば、正・準・賛助の差、そして会員社であることは関係なく、世間から「メジャー」として認識されていることが解るはず。益々どこからどこまでがメジャーなのかが解らない状況です。

    流通販売網について

    もう一つのメジャー判断基準としてよく挙げられるものに流通方法があります。全国の店舗へ出荷する際に大方の場合、一端、日本レコードセンター株式会社(NRC)ジャレード(JARED)に集められ、そこから出荷されています。この2社を使わない流通はインディーズだという解釈。ただ、この解釈だと、インディーズレーベルがメジャー会社の流通を委託している場合もメジャーになってしまうということになります。

    これを「メジャーレコード会社」と区別して「メジャー流通」という呼び方もあります。ダイキサウンドSPACE SHOWER MUSIC(旧バウンディ)のような流通会社が小規模のインディーズレーベルやアマチュアアーティストの音源を全国流通させている事例も少なくありません。(その際、NRCやJARED流通の場合もある)

    返品条件(小売店は売れ残った在庫を場合によってメーカーに返却できる)でメジャーとインディーズを区分をする解釈もあるようですが、昔ほどレコード会社は出荷数を無理して稼ぐ余力もないですし、「メジャーだろうが一定の売上が確約出来ないタイトルは基本入荷しない」姿勢を取っている店舗も実際はあります。ですので、メジャーもインディーズも返品条件が大きく異なるなんてことは年々無くなってきていると思います。アーティストやタイトルによりけりだと思いますが。

    逆に会員社が自社の特定レーベルやアーティストをインディーズとして売り出す場合もあります。

    さて、事例を上げれば上げるほど、訳が解らなくなってるかと思いますが、、、

    埒が明かなくなってきたので、取り合えずまとめてみますね。

  • 日本レコード協会正会員社はメジャーレコード会社である
  • 準・賛助会員でも親会社、販売流通の委託次第で“メジャー”と言っても間違いではない(あくまで“メジャーレコード会社”とはっきり言ってしまうこととは少し違う)
  • 非会員社でもメジャー流通(メジャーレコード会社とは別)をすることは可能
  • 現状として「メジャーレコード会社」という言葉を明確に用いず、“メジャー”という言葉だけで濁す場合が多いということです。(メジャーレコード会社、メジャー流通などの曖昧な意味を持たせる)

    かなり曖昧な言い方になってしまいますが、定期的なリリースと、宣伝含め、手広く展開すればメジャー、販売網を狭いのがインディーズ、という解釈が一番良いのかもしれません。だって殆どの場合、レコード会社の自称ですから…

    日本レコード協会に加盟してないけど、規模や正味出荷がそれには負けないレーベル会社も存在しているわけで。敢えて“インディーズ”という言葉を用いることにより、リスナーを獲得できることもある。逆に宣伝や販促によって“メジャー感”を出すことも大事だったり。

    散々、書いておいてあれなんですが、あまり深く考えてもムダなのかもしれませんし、この先益々こういうこと考えるのがムダになっていくかと思います。店舗側もメジャー/インディーズを分けて考えて売っていく方法はとうに止めて来てますし。

    ただ、「メジャーデビュー」など、リスナーに対しての宣伝文句としての影響力はありますので、その辺の使い分けはレコード会社にとっては重要なことだったりします。

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    メジャーとインディーズの違い、海外と日本のレコード会社の違い

    【2014年11月修正】
    2013年7月に執筆したものですが、その後のレーベル社名変更、再編などの動きを踏まえて2014年11月現在の市場に合わせて加筆・修正しました

    中々解りにくい、メジャーとインディーズの違い、そして海外と日本のレコード会社の違いなどをまとめてみました。ただ、読めば読むほど解りづらい内容かもしれません。自分で改めて文字にしたら途中で訳解らなくなって来ました(おい

    インディーレーベルとは?

    海外では“BIG 3(3大メジャー)”と呼ばれるレコード会社以外は全て“インディーレーベル”と呼ばれています。そもそも“Independent, Indie(インディペンデント、インディー)”とは「独立、どこにも属さない」という意味。つまり、大手資本ではない独立型のレーベルがインディーレーベルであり、日本でいうところの、DIY精神に基づく“インディーズレーベル”とは少しニュアンスが異なります。勿論、海外にも“インディーズレーベル”と呼べるスタイルのレーベルは存在しますが、“インディーズ”という言葉が和製英語なので。(参考記事:インディーロックの“インディー”ってなに?

    海外におけるメジャーの定義は「自社内で製造・国内流通を全て賄える」こと。ただ、メジャーレコード会社といってもグループ会社ですので、大体の有名レーベルはどこかしらの会社に所属している場合が多いです。(世界的なメジャーの売上シェアは約7割)

    3大メジャーの代表的なレーベルをあげておきます。(2014年11月現在、全部じゃないよ)

    Universal Music Group(UMG:ユニバーサル ミュージック・グループ)

    Island Records
    Interscope Geffen A&M
    Def Jam Recordings
    Capitol Music Group
    Blue Note Records
    Republic Records
    Universal Music Group Nashville
    Universal Music Classics
    The Verve Music Group
    Astralwerks Records
    Universal Music Enterprises
    Universal Music Latin Entertainment
    Virgin EMI Records
    Virgin Records

    Sony Music Entertainment (SME:ソニー・ミュージックエンターテインメント)

    Columbia Records
    RCA Records
    Epic Records
    Sony Music Nashville

    Warner Music Group (WMG:ワーナー・ミュージック・グループ)

    Atlantic Records Group
    Warner Bros. Records
    Rhino Entertainment
    Parlophone
    Warner Music Nashville

    日本におけるメジャーレコード会社とは?

    日本で〈メジャーレコード会社〉と呼ばれる定義は明確に決められているわけではありません。ただ、「日本レコード協会に加盟していること」が一つの判断基準として暗黙の諒解になっています。海外の定義で今の日本のメジャーレコード会社を考えるのならば、3大メジャーのユニバーサルワーナーソニー(日本のソニーは厳密にいうと3大メジャーには属さない、後述)、それに加えてエイベックスを含めた4社くらいでしょうかね。ただ、日本のレコード会社を海外のそれと並べて考えるのは難しいわけでして。

    そもそも海外におけるレコード会社は同じジャンル、似た趣向を持ったアーティストが集まり、レーベルとなり、その規模が大きくなってレコード会社となった。方や我が国の場合、電機メーカーなどの資本によりレコード会社が設立され、レコードを売るためにアーティストを探した、という経緯があるからです。

    簡単に日本のレコード会社とその歴史を簡単にまとめてみましょうか

    日本のレコード会社の発展

    1910年にアメリカ人、K.H.ホーンによって日本初のレコード会社、日本蓄音機商会が設立。その後、27年にColumbia Records(米・コロムビア)に子会社化されたのち、46年に日本コロムビアが誕生。

    同27年にレコードを開発したアメリカの〈The Victor Talking Machine Company〉の日本法人として日本ビクター蓄音器を設立。

    同27年に阿南商會、銀座十字屋がDeutsche Grammophon(独:グラムフォン)の日本国内での製造権利を元に日本ポリドール蓄音器を設立。

    その他、31年に帝國蓄音器商會(現・テイチク)設立。
    37年に講談社(当時・大日本雄辯會講談社)が音楽部門としてキングレコードを設立。

    これらのレコード会社が当時の流行歌・軍歌・戦時歌謡を中心とし、日本の音楽市場の黎明期を創り上げた。

    戦後、日本コロンビアよりリリースした美空ひばりの登場により、大衆文化の一つとして歌謡曲が広まり、各レコード会社は第二の美空ひばりを探すようになる。これにより日本の音楽市場は高度経済成長期とともに次第に発展していくようになった。

    60年代に入ると、高度経済成長期により発達した技術力と、“ポップス・ロック・フォーク”という洋楽を取り入れた新たなレコード会社が誕生。日本を代表する電機メーカーと海外レコード会社の合併会社、CBSソニー、東芝EMI、日本フォノグラム、ワーナー・パイオニアが相次いで設立され、6,70年代の洋楽ブームの発端となる。

    一方、国内資本では、徳間書店がミノルフォン(現・徳間ジャパンコミュニケーションズ、現在は第一興商グループ)、フジサンケイグループのキャニオンレコード(現・ポニーキャニオン)など他業種によるレコード会社設立も続いていく。

    さて、ここで始めて日本初の欧米独立型のインディペンデントレーベルが誕生する。

    1975年、ポリドールの井上陽水、CBSソニーの吉田拓郎、泉谷しげる、小室等が日本で始めてのアーティスト主導のレコード会社を設立した。フォーライフ(現・フォーライフ ミュージックエンタテイメント)である。当時、この4人だけで売上総額60億円とも言われ、独立から設立に至るまでのレコード会社との攻防戦はいかほどのものだったか考えただけでも恐ろしい。

    このフォーライフの設立が日本の音楽市場において大きく転機となり、その後、ファンハウス、ポリスター、トイズファクトリーなどの独立型レコード会社が数多く設立されていきます。

    現在の日本のメジャーレコード会社

    ここまでの段階で、如何に日本のレコード会社の設立・発展の経緯が複雑であるかが解ったと思います。この後、再編・合併・M&Aを繰り返していくわけですが、現在の日本レコード協会正会員17社(2014年11月現在)を、ある程度の資本基準で分けてみます。これはあくまで目安として私個人の見解で分けているだけなので、特にこういう区分があるわけでも、これが正しいわけでもありません。

    〈外資系〉
    ユニバーサル ミュージック合同会社
    (フランスのメディア企業、ビベンディ傘下である、米 ユニバーサル ミュージック・グループの日本法人)
    株式会社ワーナーミュージック・ジャパン
    (米 ワーナー・ミュージック・グループ傘下)

    〈国内資本〉
    ▼電機メーカー系列
    株式会社JVCケンウッド・ビクターエンタテインメント
    (現在はJVCケンウッド100%株主の傘下)
    株式会社テイチクエンタテインメント
    (現在はJVCケンウッド96.1%株主の子会社)
    株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント
    (日ソニー100%株主のソニーグループの音楽部門であり、米SMEとは経営も全く異なる別会社)
     
    ▼メディア出版社系列
    キングレコード株式会社
    (講談社の音楽部門として設立)
    株式会社ポニーキャニオン
    (フジサンケイグループ)
    株式会社バップ
    (日本テレビホールディングス株式会社の子会社)
     
    ▼その他通信コンテンツ系列
    日本コロムビア株式会社
    (現在はコンテンツ配信サービス企業・株式会社フェイスのグループ会社)
    日本クラウン株式会社
    (現在は第一興商傘下)
    株式会社徳間ジャパンコミュニケーションズ
    (現在は第一興商傘下、徳間書店とは業務提携関係)
     
    ▼独立型
    株式会社ビーイング
    エイベックス・マーケティング株式会社
    株式会社フォーライフ ミュージックエンタテイメント
    株式会社ドリーミュージック・

     
    ▼マネジメントオフィス系列
    株式会社ヤマハミュージックコミュニケーションズ
    株式会社よしもとアール・アンド・シー

    ここ数年の合併等の動きを見れば、ビクターエンタテインメントとテイチクがJVCケンウッドの傘下になったり、コロムビアが日立から投資ファンドであるリップルウッド、そしてコンテンツ配信企業のフェイスに買収されたり、クラウンと徳間が第一興商傘下になったりと、そもそもの設立経緯からは掛け離れている場合が多く見られます。それでもブランドとして昔ながらの会社名を残している場合が多いので、ややこしいですが。いくら再編されてもレコード会社が主となっている海外とは違い、他業種含めた日本独特の複雑な成り立ちが解りますね。

    さて、メジャーとされる一つの判断基準となっている日本レコード協会の会員制度。上記は正会員を上げましたが、3段階に別れております。

  • 正会員(正味出荷金額5億円以上の法人)
  • 準会員(それ以下の出荷金額)
  • 賛助会員(正・準会員へ販売委託(もしくは資本系列)し、正・準会員の推薦を受けた法人)
  • では、正会員をメジャーと解釈するのであるのなら、準会員・賛助会員はどういう扱いになるのか?

    ソニー系列のレコード会社、株式会社ソニー・ミュージックレーベルズ(SMEレコーズ、エピック、キューン、デフスター、などが2014年に統合)は賛助会員なのです。もし、正会員しかメジャーでないとすると、この系列会社はインディーズになってしまいます。母体のソニー・ミュージックエンタテインメントが正会員なのだから、と言ってしまえばそれまでなんですが。同様にエイベックスの販売会社であるエイベックス・マーケティング株式会社は正会員、制作会社のエイベックス・エンタテインメント株式会社は賛助会員。

    トイズファクトリーは2013年に入って初めて協会に加入し、賛助会員になりました。トイズは1990年にバップから独立した形で設立。流通を持たない制作専門の会社です。バップと資本提携は一切ないものの、流通はバップに委託してましたので、設立当初より非会員でありながらメジャーレコード会社として扱われてきました。準会員・賛助会員社は様々であり、映画制作の東宝株式会社(準会員)もいれば、VOCALOID楽曲管理を行う株式会社自主制作コンテンツ出版管理機構(賛助会員)、ソニーのマネジメント/出版会社の株式会社ソニー・ミュージックアーティスツ(賛助会員)など、レコード会社ではない会員社も多くあります。

    すでに解りづらい構図だと思いますが、更に解りづらい点が色々あります。

    日本レコード協会の会員資格が〈正味出荷金額〉であること。売上ではありません。つまり、資本金や会社の規模は関係ありません。制作はしても販売・流通を持たない会社があり、そういった小規模な会社でも音源タイトルを多く制作すれば、〈正味出荷金額〉が得られ、日本レコード協会正会員の資格が得られるということです。上記17社でも自社ビルや地方に営業所を持ち、数百人の社員がいる大規模な会社もあれば、都内のみにオフィスを構える数十人で運営されている小規模会社もあります。

    解りやすく、レコード会社の代表的な業務を3つあげてみます。あくまで判断基準としての分け方です。

    1. 制作(音源タイトルを企画、レコーディングする)
    2. 販売(音源商品タイトルの製造・出荷管理、販促・宣伝など)
    3. 流通(小売店に卸す、厳密にいうとNRC/JAREDに送る)

    2と3の違いが解りにくいかと思いますが、〈2.販売〉は販売促進を行い、小売店からの注文数、製造枚数を管理する、〈3.流通〉はその商品の現物自体を取り扱う、というニュアンスで考えてもらえれば。小規模なオフィスに数万枚の複数タイトルの現物を置くというのは無理がありますよね。ですから、そういった場合は〈2.販売〉の管理は行っても、〈3.流通〉は他社に委託するという形を取っています。

    ですので、1〜3すべてをまかなうことの出来る大規模なレコード会社は数社で、実際は〈1.制作〉〈2.販売〉のみ、もしくは〈1.制作〉だけに特化した小規模会社が多く、〈2.販売〉〈3.流通〉を大規模な会社に委託しているというケースが多く存在しています。

    マネジメント事務所系列を例に挙げます。ジャニーズ事務所のジャニーズ・エンタテイメントは制作のレコード会社で、準会員です。販売・流通はSMEのソニー・ミュージックマーケティングに委託しています。アミューズソフトエンタテインメントも準会員。中島みゆき率いる、ヤマハミュージックコミュニケーションズは正会員ですが、制作の会社なので、販売・流通はエイベックス。ハロプロで有名なアップフロントグループも制作会社、かつてはソニー、キングなどに販売・流通を委託していましたが、2012年から自社グループに株式会社アップフロントワークスを設立。現在は販売を自社で、流通をソニー、ポニーキャニオンなどで行っています。アップフロント自体はそもそも会員社ではありません。

    これらの事例を見れば、正・準・賛助の差、そして会員社であることは関係なく、世間から「メジャー」として認識されていることが解るはず。益々どこからどこまでがメジャーなのかが解らない状況です。

    流通販売網について

    もう一つのメジャー判断基準としてよく挙げられるものに流通方法があります。全国の店舗へ出荷する際に大方の場合、一端、日本レコードセンター株式会社(NRC)ジャレード(JARED)に集められ、そこから出荷されています。この2社を使わない流通はインディーズだという解釈。ただ、この解釈だと、インディーズレーベルがメジャー会社の流通を委託している場合もメジャーになってしまうということになります。

    これを「メジャーレコード会社」と区別して「メジャー流通」という呼び方もあります。ダイキサウンドSPACE SHOWER MUSIC(旧バウンディ)のような流通会社が小規模のインディーズレーベルやアマチュアアーティストの音源を全国流通させている事例も少なくありません。(その際、NRCやJARED流通の場合もある)

    返品条件(小売店は売れ残った在庫を場合によってメーカーに返却できる)でメジャーとインディーズを区分をする解釈もあるようですが、昔ほどレコード会社は出荷数を無理して稼ぐ余力もないですし、「メジャーだろうが一定の売上が確約出来ないタイトルは基本入荷しない」姿勢を取っている店舗も実際はあります。ですので、メジャーもインディーズも返品条件が大きく異なるなんてことは年々無くなってきていると思います。アーティストやタイトルによりけりだと思いますが。

    逆に会員社が自社の特定レーベルやアーティストをインディーズとして売り出す場合もあります。

    さて、事例を上げれば上げるほど、訳が解らなくなってるかと思いますが、、、

    埒が明かなくなってきたので、取り合えずまとめてみますね。

  • 日本レコード協会正会員社はメジャーレコード会社である
  • 準・賛助会員でも親会社、販売流通の委託次第で“メジャー”と言っても間違いではない(あくまで“メジャーレコード会社”とはっきり言ってしまうこととは少し違う)
  • 非会員社でもメジャー流通(メジャーレコード会社とは別)をすることは可能
  • 現状として「メジャーレコード会社」という言葉を明確に用いず、“メジャー”という言葉だけで濁す場合が多いということです。(メジャーレコード会社、メジャー流通などの曖昧な意味を持たせる)

    かなり曖昧な言い方になってしまいますが、定期的なリリースと、宣伝含め、手広く展開すればメジャー、販売網を狭いのがインディーズ、という解釈が一番良いのかもしれません。だって殆どの場合、レコード会社の自称ですから…

    日本レコード協会に加盟してないけど、規模や正味出荷がそれには負けないレーベル会社も存在しているわけで。敢えて“インディーズ”という言葉を用いることにより、リスナーを獲得できることもある。逆に宣伝や販促によって“メジャー感”を出すことも大事だったり。

    散々、書いておいてあれなんですが、あまり深く考えてもムダなのかもしれませんし、この先益々こういうこと考えるのがムダになっていくかと思います。店舗側もメジャー/インディーズを分けて考えて売っていく方法はとうに止めて来てますし。

    ただ、「メジャーデビュー」など、リスナーに対しての宣伝文句としての影響力はありますので、その辺の使い分けはレコード会社にとっては重要なことだったりします。

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