日本ではほとんど知られていない&奏者人口の少ないスティール・ギター。ギター弾きでもバンドマンでも、とくに若い世代は知らない人も多いですよね、、、
昭和生まれだったら、リアルタイムじゃなくともハワイアンのイメージはあるんじゃないかと。
スティール・ギターは元々ブルースのスライド奏法から発展していったわけで。ドブロなどのリゾネイターギターにはじまり、小型で膝に置いて演奏するラップスティール(Lap Steel)から、スタンドテーブル型のペダルスティール(Pedal Steel)まである。とくにペダルスティールは、音量調整やベンダーなどを備えたペダルに加え、8弦、10弦、12弦、ダブルネックやら、機能含めて多岐に渡り、楽器として凄まじい発展を遂げたわけです。
ハワイアンブームから、グループサウンズ、フォークまで、80年代あたりまではリード楽器として活躍してた。余談だけど、自分がガキの頃に毎日すり切れるほど聴いていた長渕剛の『長渕剛LIVE』(1981年)というギター1本の弾き語りライブアルバムがあって。「しゃぼん玉」という曲で、谷口陽一さんというゲストを迎えてスティール・ギターの間奏が入るんですよ。同じく、よく見てた『SUPER LIVE IN 西武球場』(1983年)のビデオでもバンドにスティール・ギターがいて、間奏ではリードを弾く。だからね、普通のギターというのはコードを弾く楽器で、リードを弾くのはスティール・ギターだと思ってた。そして、数年後にBOØWYに出会うんだけど、これもギターソロはスティール・ギターだと思ってたの。だって、ソロの裏ではバッキングが鳴ってるでしょ。当時はダビングして重ねるなんていうの知らなかったから、同時に2人の人間が演奏してるのかなって。いやぁ、恥ずかしい(笑)、子供の頃の思い込みって怖いねぇ…(爆)。
さてさて、ブルース好きだったら、普通のエレキギターでスライドやってる人も、アコギでボトルネックをかじってる人も、なんとなくスティール・ギターに興味があるのでは?でも、実際、敷居が高いんですよねぇ。そんなブルース好き、そしてロック好きのためのスティール・ギターのすすめ。聴いてよし、弾いてよしのギタリストたちです。
Barbara Mandrell
https://www.youtube.com/watch?v=x2M_J16z9sk
まずは巨匠枠から。
USテキサス州出身のカントリー・シンガー、Barbara Mandrell(バーバラ・マンドレル)
日本ではほとんど知られてませんが、アメリカではカントリー界の大スターです。ギターはもちろん、バンジョー、鍵盤、サックス…、いろんな楽器を演奏するマルチプレイヤー。昔のカントリーの人はなんでもこなしますよね。80年代はポップス寄りのカントリースタイルなんだけど、70年代頃までは、バリバリ弾いてます。このお方のスティール・ギターは完全に鍵盤楽器と化してます。それこそ、通常のギターにおけるボズハンド奏法(両手タッピング)に近いところがあるかもしれない。
David Gilmour – Pink Floyd
泣く子も黙るデヴィッド・ギルモア御大。ハワイアン、カントリーのイメージが強かったスティール・ギターの常識を覆した第一人者でもあります。『Meddle(邦題:おせっかい 1971年)』のオープニングを飾る「One of These Days(吹けよ風、呼べよ嵐)」を聴いて、「これギター?」と思った人も多かったかと。シド・バレット脱退後、フロイドスペクタクルの幕開けにふさわしい同作を彩る浮遊感のスペイシーなスティール・ギターは、今までのイメージとはかけ離れたものでした。
Megan Lovell – Larkin Poe
ここからは、近年のスティール・ギター事情。
まずは以前紹介したこともある、USジョージア州、アトランタ出身の美女姉妹、Larkin Poe(ラーキン・ポー)
Rebecca Lovell(レベッカ・ロベル、妹)のスモーキーな歌に、Megan Lovell(ミーガン・ロベル、姉)のスティール・ギターがまとわりつく。リッケンバッカーから繰り出すサウンドはブルージーでダーティー。すべらかなスライドではなく、ドブロやナショナルのリゾネイター的アプローチで吠える、哮り狂う。どこかビオラのようであり、サックスのようであり。
Ed Williams – The Revivalists
USニューオーリンズ出身の7人組、The Revivalists(リヴァイヴァリスツ)
古き良きR&B、ソウル、ファンク、といったブラック・ミュージックをうまくモダナイズしている抜群のセンス&演奏力を持つバンド。鍵盤やホーンのメンバーもいて、スティール・ギターが前面に出ているわけではないのだけど、バンドサウンドとしての色を添える構成要素として大きく占めている。まぁ、スティール・ギターはともかく(ヲイ)、とにかくむちゃくちゃカッコいいバンドです。
Robert Randolph
スティール・ギターをスティール・ギターっぽく弾かない人、USニュージャージー出身のRobert Randolph(ロバート・ランドロフ)
エリック・クラプトンとの共演でも話題になり、普通のエレキのように図太く弾き倒し、ブルース、ジャズ、ファンク、なんでもござれ。
Maggie Björklund
最後はデンマーク出身の、Maggie Björklund
実験音楽/即興演奏としての、スティール・ギターの可能性を最大限に引き出す人。ループやサンプラー的に駆使した演奏スタイル、効果音的でもあり、フレットにとらわれない楽器の特性を活かしてます。かといって、飛び道具としてだけではなく、ちゃんと歌モノの中で成り立たせる、シンガーソングライターとしての才能もすさまじい。
最近は比較的安価なスティール・ギターも販売されていたり、数年前よりも少しずつ見直されてきている節もあります。私もちゃんと習得したいんですけどね。最近、ウクレレサイズのミニ・ラップスティールギター“Saytone”が気になって仕方ない。