今さら訊けない サイサイ入門 〜歌って踊って笑えるガールズバンド SILENT SIREN〜

SILENT SIRENの年末恒例<年末スペシャルライブ 2018 「平成最後だョ!サイファミ全員集合!!>。昨年はデビュー5周年の11月に日本武道館2Daysがあったため、2年ぶり。今回はタイトル通りのド○フパロディ満載の、サイサイらしい悪ノリ&おバカ要素たっぷりで、「こいつら……(呆)」と思わせるエンタテインメント性溢れる内容は「ただのガールズバンドで終わらせない」という彼女たちの心意気が随所に滲み出ていた良いライヴだった。

お客さんが若干引いていた気がしなくもないハゲヅラ父さんファミリーによるお茶の間コント映像、からの、チアガールに迎え入れられる『ド○フ大爆笑』を模したオープニング。「ババンバ、バンバンバン〜♫」からなだれ込む「BANG!BANG!BANG!」に思わずニヤリ。極めつけは会場がどよめいたゲスト、安田大サーカス・クロちゃんの登場。サイサイとは古くからの付き合いではあるものの、『MONSTRE HOUSE』によって悪い意味で話題沸騰真っ只中の、このタイミングで呼んだ芸人さながらの貪欲さ。あの番組を踏まえ、“そういう視点”であらためてクロちゃんとのやりとりを見ていると(というか自然とそう見ちゃう)、相手を傷つけないが持ち上げず、優しいんだけど付け入る隙を一切与えないという、めちゃくちゃ高度な“男性のあしらい方”が垣間見えたようでもあり。セレブ芸能人とでもいうか、彼女たちの女性としてのカーストの高さを思い知らされた気がした。そこにうまく絡むクロちゃんもやはり、やっぱりすごいなぁなんて。そんな光景を見ながら特典会に参加したときの自分を思い出すのはなぜだろう……。あ、これ、バラエティ番組ではなくロックバンドのライヴコンサートの感想だからね。

デビュー当時は「読モ出身バンド」と話題になり、今では多くのロックフェスにも出演しているサイサイこと、SILENT SIREN。日本のロック好きであるなら、その名前と存在は耳にしたことがあるはず。だけど、どんなバンドかいまいちよく知らなかったり、良くも悪くもイメージ先行でなんとなく踏み込めず、という人も多いはず。

そんな人に今あらためて勧めたいSILENT SIRENの魅力。簡潔にいうならば、“ポップとキャッチーを全力で投げつけながら歌って踊って笑える男気溢れたガールズバンド”。いったい何を言ってるんだおれは。いやいや、野生のクマ狩りしたり、巨大ワニと闘ったり、無人島で生活したり、畑で野菜作ったり、健康ランドでコントやったり、ライヴ会場が天下一品ののぼりで埋め尽くされている……というロックバンドだってことは、もっと世間に知られてもいいはずなんだ。そこかよ。

「読モ出身」だからこそ、のパンク精神

振り返れば「読モ出身」という肩書きが武器にもなり枷にもなり、そこから生まれる誤解や偏見も数知れず。元々は、読者モデルとして活動していたすぅ(吉田菫/Vo.&Gt.)とひなんちゅ(梅村妃奈子/Dr.)が意気投合して結成に至ったバンドであり、“ザッツ芸能界”的なバンドではない。昼間はモデルで稼いで、そのお金でスタジオの深夜パックでバンド練習、というごくごく一般的なバンドマン生活を送っていたことは意外と知られていないことなのかもしれない。彼女たちの所属事務所は、どこか“イケイケドンドン”なイメージのある<プラチナムプロダクション>であるが、元々モデルとして所属していたすぅ以外のメンバーが入ったのはメジャーデビュー以降からだ。そうした結成からの誤解と偏見、そして葛藤が根底にあり、そこから生まれた反骨精神は、キラキラとしたあでやかなビジュアルとは裏腹に内に秘めた硬派な姿勢として、バンドを大きく差配している。SILENT SIRENというバンドを知れば知るほど、時折見せるパンク魂、ギラギラとした闘争心を感じることがあるのだ。

サイサイ楽曲の魅力

サイサイ楽曲といえば煌びやかなガールズポップ、というイメージが強いが、そうした方向性はメジャーデビュー以降に定まったものでもある。インディーズ時代はバンド名を模した「無音の警告」というような、内に向けた詞とマイナーメロのロックナンバーが多かったりする。ほとんどの楽曲を手がけるのは、元メンバーであるサウンドプロデューサーのクボナオキであり、メンバーとの共作スタイルは、結成から今日に至るまで変わっていない。外部作家による楽曲提供や有名アーティストなどのプロデュースを受けていないのである。ボカロPのsamfree作が数曲と、2017年に「フジヤマディスコ」のc/w曲「Love Balloon」でサウンドプロデューサーに元センチメンタル・バスの鈴木秋則、リリックプロデューサーに元スーパーカーのいしわたり淳治を迎えたくらいだ。そこにはクボとサイサイの絆、そして確固たる信念を感じるわけだが、同時に理解力のあるレーベル陣営に恵まれてきた、ということでもあるだろう。クボはここ数年で同事務所のアイドルグループ、26時のマスカレイドへの楽曲提供なども行ってはいるが、あくまで主はサイサイのプロデューサーであり、ライヴにおけるマニピュレーターとしての立ち位置含め、5人目のメンバーというべき存在だ。

ひたすらポップで、ひたすらキャッチー。王道正統派J-POP/ROCKをあまりに堂々とやっているために、覇道亜流感すら感じてしまうから不思議なんだ。そんな楽曲をシンプルなロックバンドのスタイルとして落とし込む。ゴージャスなウワモノや分厚いディストーションギターといった正攻法アレンジのサウンドメイクに頼るのではなく、ちょっとひねったバンドアンサブルの妙でバリエーションを生み出していく。そんな“サイサイらしさ”が至るところににじみ出ていると感じるのは「八月の夜」(2015年)だ。

メリハリのついたリズムに流麗なメロディ。そこに乗る詞(ことば)も絶妙。すぅの作家性である、情趣のある言葉遊びがうららかに転がっていく。サイサイ曲がどこか覇道に感じるのは、彼女のメロに対する詞の置き方が特徴的だからだと思う。切れ味抜群のひなんちゅのドラムとうねりを上げていくあいにゃんのベースも、サイサイの大きな要。ライブにおける「八月の夜」はリズム隊2人が織りなす、屈強なグルーヴにゾクゾクするんだ。

“女性ならでは”が溢れる無比のプレイヤーとして

ひなんちゅは美しいドラマーだ。伸びた背筋としなやかな手の動き。凛々しくキレのあるドラミングは“正確”よりも“精確”こそ相応しい。低めにチューニングされた図太いスネアの迷いのないショットと、鶴舞う姿のシンバルレガートに息を呑む。フロアタムにためてためて、次の瞬間スネアで取り戻して行く様はライブでの醍醐味だ。そして足癖の悪さもご愛嬌。キックとハットの開閉の暴れっぷりたるや。

男性パワードラマーとは違う力強さ、そんなに思い切り叩かなくとも大きくタイトな音を出せる、そんな当たり前のことを教えてくれる。

女性ベーシストは男性にはない艶っぽさと粘りのあるリズムを持っている。あいにゃん(山内あいな/Ba.)はにこやかな表情ながらも、聴き手の身体中にまとわりつくようなフレージングが絶妙だ。要はエグい。「フジヤマディスコ」や「チェリボム」のスラップにみる派手なプレイに目が行きがちだが、黒人ベーシストさながらに“首”でリズムを取りながらネックを立て気味に構えて安定させ、指板を駆け巡る左手と中指の使い方が妙に色気のある右手のツーフィンガーによって繰り出される、“うねるプレイ”こそ彼女の真髄。先述の「八月の夜」しかり、「さよなら日比谷」の、無機質ながらのたうち廻るようなラインなんて、聴けば聴くほどちょっとおかしいぞ。

そして、歌だ。「〜みたい」などという安易な言葉で片付けられない魅力的なすぅの澄んだ歌声。純朴な少女の無邪気さと、大人の女性がふと見せる儚さが共存するその声は、万人受けとは言わないが、最初は抵抗があったとしても気がつくと抜け出せなくなるから不思議だ。昔は少々危なっかしいところもあったが、ここ数年での安定感、色気ともに表現力素晴らしく。マイク乗りのよさ、圧倒的に通る声は、音源でもライヴでも、心地よくスッと耳に入ってくる。サイサイの音源は、各楽器の定位とシンバルの余韻までが鮮明に聴こえるほど、丁寧なミックスが特徴的でもあるのだが、ヴォーカルが目の前にいる感覚になるのは、特徴的な声の倍音成分がうまい具合にバンドの音と干渉せずに前に出てくる、ということもあるのかもしれない。

独特のタイム感、良い意味でルーズさを持っている彼女のギターはサイサイアンサンブルの妙味。前のめりのリズム隊とは対照的なマイペース感は、熱くなりすぎて暴走気味のグルーヴをグッと引き戻したり、ここぞというときにはジャストタイミングで疾走する様相が実に心地好いのである。

歌って踊れるキーボーディストといえば、男性は森岡賢(SOFT BALLET/minus(-))と阿部義晴(ユニコーン)、女性はゆかるん(黒坂優香子/Key.)と相場が決まっている。黒坂だけど美白。サイサイライブの楽しさ、ハッピーオーラをバンバン放つ原動力は彼女の存在が大きい。新体操で鍛えた運動神経と勘の良さが、ライヴにおいてオーディエンスを扇動していく。笑顔を振りまきながら客席に向かって掲げた左手とは対照的に、右手は複雑なフレーズを奏でていることも珍しくなく、加えて歌のハモりもやっていたりと、職人業がキラリと光る才色兼備。しとやかなピアニストとして、サイケなオルガン奏者として、そしてDJ YUKAKOOの乱れっぷりは今やライブに欠かせない起爆剤だ。

サイサイの登場によって、バンドのキーボードの役割が変わった気がするんだ。これまで、キーボーディストといえば、四方を囲んださまざまな鍵盤機器を操りバンドサウンドに厚みを出すこと、楽曲にバリエーションを与えることが主とされてきた。しかし、ゆかるんは必要最低限の鍵盤だけで、歌に対する合いの手、茶々入れフレーズで攻めていく。効果音的に挟み込まれる素っ頓狂なフレーズはキャッチー性をより色濃いものにするのである。そんなスタイルのバンドが明らかに増えた気がする。少なくとも“客を煽る”役割がキーボーディストに備わったのは、ゆかるんの存在が大きいのは間違いない。だって、女性キーボードがいる高校生バンド、みんなこぞって左手上げて弾いてるぞ。

一見さん置いてけぼりのバラエティスキル

先述のクロちゃんのくだりは、サイサイのワンマンライブには欠かせない「サイサイコーナー」の一幕。メンバーがゲームをしたり、クイズをしたりと、バラエティ要素を打ち出したもので、ツアーでは毎回内容が違うためにコアなファンにとってはこのために全通したくなるほどの人気を誇っている。しかしながら反面でMCの範疇に収まらないガチっぷりに、一見さん置いてけぼりになり兼ねない紙一重な時間だったりすることも事実だ。熱血漢リーダー・ひなんちゅ、自由奔放なすぅ、ちょっととぼけたあいにゃん、器用さゆえに空回りしがちなゆかるん、とわかりやすいキャラ立ちした各メンバーの特性さえつかめれば、当人たちのトーク&バラエティスキルもあるので、充分に楽しめると思うのだが、「はじめまして」のお客さんにはなかなかそうもいかなかったりする。初めてサイサイを観る知人を連れて行ったら「よくわからない」と言われた。うん、私自身も初めて見たとき、よくわからなっかったよ。おい。

彼女たちのバラエティ面は、『サイサイてれび!』 で炸裂しているのだけれど、実際どれくらいのファンが見ているだろうか(CSテレ朝チャンネル『おちゃの間サイサイ』、テレ朝動画『おちゃの娘サイサイ』)。無料ウェブ番組だった数年前と比べるとだいぶ少なk、おや、誰か来たようだ。え、私? 私は意識高いサイサイファミリー(ファンクラブ会員)なので(通常会員だけどな……)、このためだけにCSテレ朝チャンネルに加入している。贔屓目ではなく、彼女たちの発するコンテンツは普通に面白いのでもっと一般層にも知ってもらいたいところ。体を張った芸……、いや、スキルは、乱暴な言い方をすれば、女性版T○KIO。ガールズバンド、ロックバンドにとどまらないエンタテインメントさえも飲み込もうとしてるんだ。おいこれ、沼だぞ、サイサイ沼。ズブズブズブズブブブブ………

音楽的な側面とバンドとしての魅力を長々と語って来たわけだが、こんなキレイなおねえさんたちがロックバンドを組んでいること自体が奇跡なのだから、もっとビジュアルで売ってもいいんじゃね? そんなことを『写真集SILENT SIREN』を眺めながら思うのである。

“ガールズバンド”ってなんだろう。そう呼ばれることを好まない女性バンドだっている。どちらかといえば男性優位と言われがちなロックの世界で、女性ならではのもの、女性にしかできないことを極めようとしてるバンドを指すものだと思うんだ、ガールズバンドって。

そう考えると、うん、SILENT SIRENって、最高じゃんか。

写真集SILENT SIREN
SILENT SIREN
リットーミュージック
Release: 2018/12/14

Amazon Rakuten

GIRLS POWER
SILENT SIREN
EMI Records
Release: 2017/12/27

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