パイン、シダー、ポローニア…… 針葉樹材のギターがいまアツい

一般的なエレクトリックギターのボディ材といえば、フェンダー系はアルダーとアッシュ、バスウッドにポプラなど。ギブソン系はマホガニー。共通して言えるのは、広葉樹。ちょっと変わった材、ウォルナットやカリンなど、そしてネックや指板に多く用いられるメイプルもローズウッドも、みんな広葉樹です。そんな中で、いま注目を浴びているのが針葉樹材のギター。おう、針葉樹のギターはいいぞ。

私が作ったこのテレキャスター。アメリカではレッドシダーと並んで、DIYに多く用いられる Douglas fir(ダグラスファー)という材、和名はベイマツ(米松)です。厳密にいうと日本のマツとは違うらしいのですが、紛れもない針葉樹。

海外で増え始めている針葉樹ギター

ギターに使用される針葉樹といえば、Spruce(スプルース、米唐檜)Ceder(シダー、杉)など、アコースティックギターのトップ材として使われることが多いですが、ソリッドギターでは最初期のフェンダーテレキャスターがPine(パイン、松)材だったことにより、ここ10年くらいで急に注目を浴び始めました。そして昨今、海外ではこうしたパインやシダーといった針葉樹材をソリッドギターに使用する工房やルシアーたちが増えてきています。<Fano Guitars>の創始者デニス・ファーノが立ち上げた<Novo Guitars>は、アッシュやアルダー材はオプションであり、基本材として“Tempered Pine”(“焼いた”松)を使用。ブラックガードのテレキャスターにこだわり続ける<Glendale Guitars>も基本はパイン。個性的でワイルドなモデルを数多く作ってる<Blast Cult>は、その強烈なルックスが目を惹くモデル<Holy 13>で“Blue Pine”(ヒマラヤゴヨウ、マツの一種)を使用しているほか、“Louisiana Cypress”(ラクウショウ、ヒノキの一種)を使ったりしております。

針葉樹は、バーズアイやバール、タイガーストライプ(虎目)などのゆらめいた模様が描く“杢目”ではなく、年輪がハッキリとした“木目”が特徴であり、道管や節も多い材なのでそれをどう捉えるか、好みは別れると思います。質感、肌触わりも広葉樹より繊維っぽく、悪く言えばスカスカに感じるかと。そのぶん、平均的に重量は軽めです。

“桐”のギターが人気

そして、今最も注目を浴びている針葉樹材が“Paulownia”(ポローニア、ポローニャ)、日本でいうです。日本では激安ギターに使われ、バカにされていたけど、先の<Glendale Guitars>はじめ、<USA Custom Guitars/USACG>や<Musikraft>といった世界的に有名な製造工場がこぞって扱い始めている材。フェンダーも、カントリーミュージックの雄、ブラッド・ペイズリーのシグネイチャーモデルに、ポローニアをスプルーストップ+バックで挟んだ、針葉樹サンドの“SEB構造”を取り入れております。




ポローニアの魅力はその圧倒的な軽さ。テレキャスターボディだと、なんと平均1.1〜1.5kg程度。軽いスワンプアッシュのボディが平均1.8〜2.0kgくらいですからね。ヴィンテージスタイルのテレキャスターとしてネック&パーツを組み込むと、大体プラス1kgになるので、ポローニアのテレキャスターは総重量が2.1〜2.5kg程度という脅威の軽さを誇ります。テレキャスターシンラインより軽い。軽めのシンラインが2.8〜3.0kg、普通のテレキャスターは3.0〜3.2kgくらいで“激軽”なんて言われますけど、その比ではない。それよりも500mlペットボトル1本分以上軽いわけです。

ただ、ポローニアはすごく柔らかい材です。ブラッド・ペイズリーモデルがスプルースで挟んでいるのは、SEB構造による独特の“鳴り”がいちばんの目的だと思いますが、重量を少し稼ぐことと、柔らかいゆえにキズが付きやすい材を保護するためでもあるのではないかと。ただ、スプルース自体もポローニアほどではないけど、広葉樹材と比べれば軽くて柔らかい材です。

私がテレキャスターの表面を焼いているのは見た目も大きいけど、焼き焦がし炭素層を人為的に形成する日本古来の“焼き杉”手法で表面を強くしている意味合いもあります。先述の<Fano Guitars>の“Tempered Pine”(“焼いた”松)も同様かと。

針葉樹が人気のワケ

いま針葉樹が人気の理由はなにか? 軽くて柔らかい材である恩恵、ズバリ、アコギの鳴り方がするんです。シンラインなど、ホロウボディのギターは空洞が響く音量が大きい鳴り方。対して針葉樹のギターは音量自体はないけど、トップ(表面)が思いっきり鳴ってコード感の出る響きがする。アコギのトップ材は決まって針葉樹(スプルース、シダー)が使われるのも納得。アコギ的な鳴り方って、セミアコよりテレキャスターのほうが近かったりするじゃないですか。各弦の分離だったり、キレだったり。だから針葉樹とテレキャスターとの相性は抜群なんです。ものすごく音抜けが良く、カラっとしていて軽やかな音がします。アッシュテレにありがちな妙な倍音もなく、ジャキジャキキンキンしないし。そして、弾き手が感じる独特のエア感のある弾き心地は病みつきになります。




これ、いかにも「シンヨウジュゥ〜」っていう感じの音がしてます

欠点はやっぱり、材が柔らかいこと。バスウッドを嫌う人にはダメなんじゃないかと。いないとは思うけど、フロイドローズを搭載したらスタッドがすぐ抜けてしまいそう。ただ、誤解しないで欲しいのは、針葉樹はDIYや日本でも古くから建築材として使われているので、耐久性はあるのです。

あと、重量がすごく軽いのでハムバッカーなどパワーがあるピックアップには向かないと思われます。暴れちゃうだろうし、ハウリやすいかも。あくまで、ヴィンテージ系のピックアップであまり歪ませず、エフェクトも少ない人向けなのかもしれない。ウエストコーストやカントリーなサウンドが好きな人、フィンガーピッキングでパッキーンとした軽やかなプレイしたい人には最高ですよ、針葉樹ギター。

BRAD PAISLEY ROAD WORN TELECASTER®
Fender

Amazon Rakuten

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パイン、シダー、ポローニア…… 針葉樹材のギターがいまアツい

一般的なエレクトリックギターのボディ材といえば、フェンダー系はアルダーとアッシュ、バスウッドにポプラなど。ギブソン系はマホガニー。共通して言えるのは、広葉樹。ちょっと変わった材、ウォルナットやカリンなど、そしてネックや指板に多く用いられるメイプルもローズウッドも、みんな広葉樹です。そんな中で、いま注目を浴びているのが針葉樹材のギター。おう、針葉樹のギターはいいぞ。

私が作ったこのテレキャスター。アメリカではレッドシダーと並んで、DIYに多く用いられる Douglas fir(ダグラスファー)という材、和名はベイマツ(米松)です。厳密にいうと日本のマツとは違うらしいのですが、紛れもない針葉樹。

海外で増え始めている針葉樹ギター

ギターに使用される針葉樹といえば、Spruce(スプルース、米唐檜)Ceder(シダー、杉)など、アコースティックギターのトップ材として使われることが多いですが、ソリッドギターでは最初期のフェンダーテレキャスターがPine(パイン、松)材だったことにより、ここ10年くらいで急に注目を浴び始めました。そして昨今、海外ではこうしたパインやシダーといった針葉樹材をソリッドギターに使用する工房やルシアーたちが増えてきています。<Fano Guitars>の創始者デニス・ファーノが立ち上げた<Novo Guitars>は、アッシュやアルダー材はオプションであり、基本材として“Tempered Pine”(“焼いた”松)を使用。ブラックガードのテレキャスターにこだわり続ける<Glendale Guitars>も基本はパイン。個性的でワイルドなモデルを数多く作ってる<Blast Cult>は、その強烈なルックスが目を惹くモデル<Holy 13>で“Blue Pine”(ヒマラヤゴヨウ、マツの一種)を使用しているほか、“Louisiana Cypress”(ラクウショウ、ヒノキの一種)を使ったりしております。

針葉樹は、バーズアイやバール、タイガーストライプ(虎目)などのゆらめいた模様が描く“杢目”ではなく、年輪がハッキリとした“木目”が特徴であり、道管や節も多い材なのでそれをどう捉えるか、好みは別れると思います。質感、肌触わりも広葉樹より繊維っぽく、悪く言えばスカスカに感じるかと。そのぶん、平均的に重量は軽めです。

“桐”のギターが人気

そして、今最も注目を浴びている針葉樹材が“Paulownia”(ポローニア、ポローニャ)、日本でいうです。日本では激安ギターに使われ、バカにされていたけど、先の<Glendale Guitars>はじめ、<USA Custom Guitars/USACG>や<Musikraft>といった世界的に有名な製造工場がこぞって扱い始めている材。フェンダーも、カントリーミュージックの雄、ブラッド・ペイズリーのシグネイチャーモデルに、ポローニアをスプルーストップ+バックで挟んだ、針葉樹サンドの“SEB構造”を取り入れております。




ポローニアの魅力はその圧倒的な軽さ。テレキャスターボディだと、なんと平均1.1〜1.5kg程度。軽いスワンプアッシュのボディが平均1.8〜2.0kgくらいですからね。ヴィンテージスタイルのテレキャスターとしてネック&パーツを組み込むと、大体プラス1kgになるので、ポローニアのテレキャスターは総重量が2.1〜2.5kg程度という脅威の軽さを誇ります。テレキャスターシンラインより軽い。軽めのシンラインが2.8〜3.0kg、普通のテレキャスターは3.0〜3.2kgくらいで“激軽”なんて言われますけど、その比ではない。それよりも500mlペットボトル1本分以上軽いわけです。

ただ、ポローニアはすごく柔らかい材です。ブラッド・ペイズリーモデルがスプルースで挟んでいるのは、SEB構造による独特の“鳴り”がいちばんの目的だと思いますが、重量を少し稼ぐことと、柔らかいゆえにキズが付きやすい材を保護するためでもあるのではないかと。ただ、スプルース自体もポローニアほどではないけど、広葉樹材と比べれば軽くて柔らかい材です。

私がテレキャスターの表面を焼いているのは見た目も大きいけど、焼き焦がし炭素層を人為的に形成する日本古来の“焼き杉”手法で表面を強くしている意味合いもあります。先述の<Fano Guitars>の“Tempered Pine”(“焼いた”松)も同様かと。

針葉樹が人気のワケ

いま針葉樹が人気の理由はなにか? 軽くて柔らかい材である恩恵、ズバリ、アコギの鳴り方がするんです。シンラインなど、ホロウボディのギターは空洞が響く音量が大きい鳴り方。対して針葉樹のギターは音量自体はないけど、トップ(表面)が思いっきり鳴ってコード感の出る響きがする。アコギのトップ材は決まって針葉樹(スプルース、シダー)が使われるのも納得。アコギ的な鳴り方って、セミアコよりテレキャスターのほうが近かったりするじゃないですか。各弦の分離だったり、キレだったり。だから針葉樹とテレキャスターとの相性は抜群なんです。ものすごく音抜けが良く、カラっとしていて軽やかな音がします。アッシュテレにありがちな妙な倍音もなく、ジャキジャキキンキンしないし。そして、弾き手が感じる独特のエア感のある弾き心地は病みつきになります。




これ、いかにも「シンヨウジュゥ〜」っていう感じの音がしてます

欠点はやっぱり、材が柔らかいこと。バスウッドを嫌う人にはダメなんじゃないかと。いないとは思うけど、フロイドローズを搭載したらスタッドがすぐ抜けてしまいそう。ただ、誤解しないで欲しいのは、針葉樹はDIYや日本でも古くから建築材として使われているので、耐久性はあるのです。

あと、重量がすごく軽いのでハムバッカーなどパワーがあるピックアップには向かないと思われます。暴れちゃうだろうし、ハウリやすいかも。あくまで、ヴィンテージ系のピックアップであまり歪ませず、エフェクトも少ない人向けなのかもしれない。ウエストコーストやカントリーなサウンドが好きな人、フィンガーピッキングでパッキーンとした軽やかなプレイしたい人には最高ですよ、針葉樹ギター。

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