先日、デンマークのインディーズシーンをまとめたとき、予想以上に興味深く、各国別にまとめたら面白いんじゃないかと思い立ったので、〈世界のロックから〉という形でシリーズ化してみようじゃないかと。
オーストラリアのアーティストと言えば、カイリー・ミノーグ、ナタリー・インブルーリア、バンドではINXS、AC/DC、JET、近年ではThe Vines、Gotyeなどなど、数多くのアーティストやバンドがおりまして、アメリカ/イギリスに匹敵する音楽大国なのですが。
以前、The Jezabelsを取り上げたときに触れた「自分たちで制作、宣伝、販売する」という自主制作DIY精神を持つバンドが数多く活動している、それが今のオーストラリアのインディーズシーン。
オーストラリアには〈Triple J〉というインターネットラジオ局があり、ここで取り上げられるのはメジャーおよびそういった路線を一切排除した音楽、インディーロック、ポップスが中心となってます。更に〈Unearthed〉というオーストラリアのインディーズ・オンリーの放送局があります。
更にこの〈Unearthed〉ではUS/UKなどの音楽は一切流れません、メジャーアーティストも流れません、100%オージー・インディーズ。ロックのみならず、ダンス、エレクトロニック、R&Bなどジャンルは様々。ネットラジオに加え、各アーティストのプロフィール、試聴、無料DL機能も備えており、各アーティストへの投票などもでき、ランキングチャートに反映されます。実際ここから人気を博したアーティストも出てきたり、オーストラリアでは大変な盛り上がりを見せています。
今日はこの〈Triple J Unearthed〉からのオーストラリアのインディーズバンドをいくつか紹介。
現在のオーストラリアシーンで多く観られるのは、トロピカル・サイケデリック・ポップ。
MGMTやVampire Weekendと比較されるバンドが多いんだけど、もっと南国リゾート寄りのトロピカルなサウンド要素を持つバンドが多いです。やっぱり南半球だからでしょうか。子供の頃、オーストラリア製の地図を見たとき逆さまだったり、サンタクロースがサーフィンに乗ってやってくるなんて話を聞いたとき、カルチャーショックを受けた人も多いと思います。州境が直線過ぎるだろ、とか。でも山脈や砂漠が多いから日本のような複雑な県境は無意味(無理)なんでしょう。そういった日本の常識とは真逆な部分はやっぱり感性に反映されると思うんですよ。
オーストラリアの地理を改めて世界地図で確認すると、アジアからもアメリカからも、ものすごい離れた場所にあるんですよね、でも実際はイギリス統治下にあった時代もあったり、今でも意外と親和性は高かったりもする。
ということで、トロピカル・カンガルー・ロック!!
このクソ寒い時期に何言ってるんだって?良いんだよ、オーストラリアはこれからが夏本番なんだー!
The Griswolds
シドニーの愉快なバンド、The Griswolds(ザ・グリスウォールズ)
今年6月に4曲入りデジタルEPを配信開始、同時にリード曲『Heart Of A Lion』のMVが公開されるや否や、日本でもジワジワと人気が出てきてます。
ゼンマイ仕掛けの人形が暴走しちゃったような、そんな危うさギリギリ、フルスロットルなバンドです。
色キ○ガイと意味解らないほどのテンション、サイコーです!
The Jungle Giants
Sam Hales (Vocals/Guitar), Cesira Aitken (Lead Guitar), Andrew Dooris (Bass Guitar/Backing), Keelan Bijker (Drums)
ブリスペン(シドニー、メルボルンに次ぐオーストラリア第三の都市)のティーンエイジャー4人組、The Jungle Giants(ザ・ジャングル・ジャイアンツ)
若さ溢れるキャッチーでポップで甘酸っぱさ溢れる楽曲。心地よいカッティングとそれに絡みつくボイシングの緻密なギターが抜群のセンス。楽曲自体はサラっと聴きやすいけど、アレンジがハンパないっす
密室でクルクル廻るカメラのシンプルながらもゴキゲンなMV。Cesira嬢(セジラ?シジラ?)カワイイ。
ライブ映像を交えたMV。トロピカルな楽曲がフェス気分を高揚させる。
San Cisco
Jordi Davieson (guitar, lead vocals), Josh Biondillo (guitar, vocals), Nick Garner (bass), Scarlett Stevens (drums, vocals)
サンフランシスコじゃないよ、パース出身の4人組、San Cisco(サン・シスコ)
バンド名は、サンフランシスコとは一切関係ないらしい。
まさにTriple J Unearthedから火がついたバンドです。
去年、EP『Golden Revolver』が話題になったときに高校生だったはずなので、まだ19,20歳になったかならないかくらいの若いバンド、紅一点ドラマーのスカーレット嬢のお父上はJohn Butlerのレーベル、Jarrah Recordsを作った人だとか!でもSan Ciscoは自主制作です。マネジメントの手伝いはしているようですが。
ひたすらキャッチー、一度聴いたら離れない、ポップとはまた違う異様な明るさを持つ不思議なバンド。スカーレットタソカワイイヨ(ヲイ
なんとも脱力MV、なんともカワイイ仕上がりだこと。ドゥルルットゥ〜 ドゥルルットゥトゥ〜♫
BalconyTVからのアコースティックライブ。良質ソングなのがよく解ります。アコギはやっぱりコール・クラークですね。スカーレットタソカワイイヨ(ヲイ
Ball Park Music
Sam Cromack (guitar/vocals), Jennifer Boyce (bass, backing vocals), Paul Furness (keys, trombone), Dean Hanson (guitar, bass, backing vocals), Daniel Hanson (drums,backing vocals)
ブリスペンの5人組(元々は6人組)、Ball Park Music(ボール・パーク・ミュージック)
全員89年生まれ、ちなみにギターのDeanとドラムのDanielは双子。元々はヴォーカル・サムのソロプロジェクトとして大学の同級生の集まりで始まったこのバンド、何となく作ったEP『Rolling On The Floor, Laughing Ourselves To Sleep』がTriple JでO.A.され、話題に。その後ライブ活動とコンテスト入賞などで力をつけ、2011年にはTriple Jの新人アーティスト・オブ・イヤーにノミネートされるものの、惜しくも大賞ならず。この年の受賞はGotyeだったからしょうがない。
平成生まれとは思えない貫録のあるアダルティな良質な超ポップソングをやってます。
反復リズムに乗せて、何とも言えない絶妙なハーモニー
http://www.youtube.com/watch?v=a_lFxlBhz4I
Triple Jで人気が出るきっかけになった曲。唐突なハードロック調のギターソロも印象的。
これ、2008年の大学生時代のときの音源なんだぜ、、、
Hey Geronimo
Tony Garrett (Drums), Greg Chiapello (Bass), Pete Kilroy (Guitar) Andrew Stone (Keys), Rosco Pearson (Guitar)
ビーチボーイズとビールが好きなことは解りました。逆にそれ以外の情報はよく解りませんでした。
ブリスペンのゴキゲンな5人組、Hey Geronimo(ヘイ・ジェロニモ)
昨年突如iPhoneゲーム風のMVが投下され、話題になりました。
アフォなんだか、シュールなんだか、こういうことを全力でやる感性、大好きです。
今年待望のEPがリリースされ、公開されたMVがこちら。ゴキゲンですよ、夏!夏!夏!突っ込みどころ満載の内容ですが、とりあえず踊っておけ!
Tigertown
Chris | Charlie | Alexi | Kurt | Elodie
最後に紹介するのは先述のバンドとはちょっと違う、南国リゾートのイメージとは真逆に広大な大陸イメージを持つ、オーストラリアの民族衣装を身にまとった、Tigertown(タイガータウン)
最近知ったんですけど、なにこれ、なんだかちょっと凄いんですよ(汗
アコースティック楽器を巧みに使ったサイケデリックフォークなんですけど、、、そんな枠には収まっていないっ!
楽曲の美しさと、壮大さと、、、あと、MVがハンパない!
ちょっと、これは何の映画でしょうか、わかりません、、、
一応、再度確認しておきますけど、Tigertownはインディーズバンドです。どこのレーベルにも事務所にも所属しておりません。完全自主制作です。
ほのぼのとした山小屋?でのアコースティックセッション。さりげない動画ですけど、何気になんなのこれ、歌も演奏力もハンパないんですけど!
ちょっと、このバンド凄すぎや、、、
オフィシャルサイトから『Go Now』が無料DLできます。サイトも良い感じですなぁ、デザインもさることながら、情報をFacebook、Twitter、写真や動画をinstagramやTumblrなど巧みに使い分けていて、バンド名ドメインの主サイトはその統合カタログ的になってます。ネットにおけるアーティスト活動における模範ではないでしょうか。jQueryのデザインレイアウトも見やすいし、全てにおいての完成度が高い。
ちょっと、このバンド凄すぎや、、、(大事なことなので
ネットの普及で世界各国の人たちに自分たちの楽曲を聴かせることが容易になりました。
ある意味、ネットを上手く使うことが出来ることが最大のプロモーション展開になりつつあります。
海外では動画サイトにおけるHD画質MVフル視聴、SoundCloudでのフル音源試聴、無料DL、Bandcampでの楽曲販売、この辺は当たり前になってますね。日本では“無料提供”という言葉に対してシビアなので、これらを実践しているアーティストは殆ど居ませんが。メジャーアーティストならともかく、これから売り出そうとするとき「先ず聴いてもらう」ことが先決なはずのにそこを出し惜しみしちゃっても仕方がないと思うんですが。
どことなく、メジャー/インディーズに限らずCD至上主義なところが日本には根強くあって、アマチュアバンドでもCDプレスや全国流通にこだわってるアーティストが多いのが現状。実際、プレスしても流通しても宣伝しなきゃ売れないのに。海外だとCDやパッケージに拘らないアーティストも増えてきました。最大の宣伝方法は試聴なのかもしれません。
「レーベルやレコード会社に所属すれば宣伝をやってくれる」そんな時代もありました。
今日取り上げたバンドたち、リンク先の音源タイトルページを見てみると、ほとんどが「レーベル名=バンド名」もしくは「N/A(”Not Applicable” 著作権ナシ)なんです。
レーベルだって、日本だとレコード会社のようなイメージですけど、本来は似たような音楽性や同じ志しを持ったいくつかのアーティストが集まっているだけですからね。実際、海外の名の知れたレーベルでも、そういった形態で実は会社してない場合も数多く存在しています。
メジャーだのなんだの、世界デビューだ、iTunesで何十カ国配信だ、と大々的に打ち出さなくとも、5000km以上離れた国のインディーズバンドの音がこうして届いているんですからね。
「自分たちで制作、宣伝、販売する」
日本市場では中々難しい現実問題もあるかもしれませんが、ここにインディーズ魂の原点があるかもしれません。